お酒と水質の深い関係:SS値の重要性
お酒を知りたい
先生、『SS』ってなんですか?お酒のラベルに書いてありました。
お酒のプロ
SSは『浮遊物質量』の略で、水の中に浮いている小さな粒々の量のことだよ。お酒を作る過程で、お米を洗うでしょ?その洗米排水には、お米のカスなどがたくさん浮いているんだ。その量をSSで表すんだよ。
お酒を知りたい
なるほど。お米のカスですね。それって、お酒の品質に関係あるんですか?
お酒のプロ
そうだね。SSが多いと、お酒の濁りの原因になることがあるんだ。だから、SSは水の汚れ具合を示す指標として使われていて、お酒造りでは、このSSの値をなるべく低くするように工夫しているんだよ。
SSとは。
お酒造りで使われるお米を洗った後の排水に含まれる、水に浮かんでいる細かいゴミのことを『SS』と呼びます。『SS』は『浮遊物質量』の略で、水の中の汚れ具合を示すものです。水質の汚れ具合を示す指標には、『SS』の他に、『BOD』や『COD』といったものがあります。
お酒造りの水
酒造りにおいて、水はまさに命の源と言えるでしょう。お酒は、原料である米を麹菌や酵母によって発酵させて造られますが、その工程のあらゆる場面で水が重要な役割を担っています。まず、米を洗うのも水、蒸すのも水、そして麹を造るのも、酵母を育てるのも、発酵の温度を管理するのも、全て水です。このように、仕込み水と呼ばれる仕込み工程で使う水以外にも、洗米や冷却など様々な用途で水が欠かせません。
水の質は、お酒の風味や品質に決定的な影響を与えます。水に含まれるミネラル分は、酵母の働きを活発にしたり、発酵を調整したりする効果があります。例えば、カルシウムは酵母の増殖を促し、マグネシウムは発酵を穏やかにすると言われています。また、カリウムは雑菌の繁殖を抑える効果があり、お酒の品質維持に役立ちます。逆に、鉄分が多いと色が悪くなったり、味が損なわれたりする可能性があります。さらに、水に含まれる有機物や不純物も、お酒の風味に影響を与えます。そのため、酒蔵ではそれぞれの目指すお酒の味わいに合わせて、最適な水質になるよう調整を行っています。
古くから名酒の産地として知られる地域には、必ずと言っていいほど良質な水源が存在します。例えば、灘の「宮水」や伏見の「伏水」は、酒造りに適した水として有名です。これらの水は、適度なミネラル分を含んでおり、雑菌も少ないため、香り高く、まろやかな味わいの日本酒を生み出します。酒蔵は、こうした水源の恩恵を受けながら、長年培ってきた技術と経験を活かして、個性豊かなお酒を造り続けているのです。まさに、水は酒造りの生命線であり、お酒の味わいを決定づける重要な要素と言えるでしょう。
ミネラル | 効果 |
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カルシウム | 酵母の増殖を促進 |
マグネシウム | 発酵を穏やかにする |
カリウム | 雑菌の繁殖を抑える |
鉄分 | 多すぎると色や味が悪くなる |
用途 | 水 |
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洗米 | 必要 |
蒸米 | 必要 |
麹造り | 必要 |
酵母育成 | 必要 |
温度管理 | 必要 |
産地 | 水 |
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灘 | 宮水 |
伏見 | 伏水 |
指標としてのSS
お酒造りに欠かせない仕込み水は、その清らかさがお酒の品質を左右する重要な要素です。仕込み水の良し悪しを測る指標の一つに、濁りの度合いを示す「浮遊物質量」、略して「エスエス」があります。この「エスエス」は、水の中にどれだけの固形物が浮いているかを示す数値で、値が高いほど水は濁って見えます。
澄み切った美しい水は、見た目だけでなく、味にも良い影響を与えます。お酒造りで使う水に濁りがあると、お酒本来の繊細な風味を損なってしまうことがあります。雑味や異臭の原因となるだけでなく、発酵に悪影響を及ぼす可能性も懸念されます。酵母はきれいな水の中で活発に活動し、良質なアルコールを生み出します。濁った水では、酵母の働きが阻害され、発酵がうまく進まないばかりか、思わぬ雑菌の繁殖を招き、お酒の品質低下に繋がる恐れもあるのです。
そのため、お酒を造る蔵では、仕込み水の「エスエス」値を常に注意深く監視しています。「エスエス」の測定は、水質管理の第一歩と言えるでしょう。もし「エスエス」値が高い場合は、ろ過などの適切な処理を行い、清浄な水に整えます。美味しいお酒を造るためには、原料となる米や麹はもちろんのこと、仕込み水にもこだわることが大切です。水質を細かく管理し、「エスエス」値を低く保つことで、雑味のないすっきりとした味わいの、高品質なお酒を生み出すことができるのです。「エスエス」は単独で用いられる指標ではなく、生物化学的酸素要求量(ビーオーディー)や化学的酸素要求量(シーオーディー)といった他の水質指標と合わせて総合的に判断することで、より正確な水質評価が可能になります。これらの指標を組み合わせることで、水質汚染の全体像を把握し、より効果的な水処理対策を講じることができるのです。
項目 | 内容 |
---|---|
仕込み水 | お酒造りに不可欠な要素であり、清らかさがお酒の品質に影響を与える。 |
浮遊物質量(エスエス) | 水の濁りの度合いを示す指標。値が高いほど水は濁っている。 |
濁った水の影響 | お酒の風味を損ない、雑味や異臭の原因となる。発酵にも悪影響を及ぼし、酵母の働きを阻害する。雑菌の繁殖を招き、品質低下に繋がる可能性もある。 |
エスエス値の管理 | お酒造りの蔵では、エスエス値を注意深く監視し、ろ過などの処理を行って清浄な水を維持する。 |
水質管理の重要性 | 美味しいお酒を造るためには、米や麹だけでなく、仕込み水にもこだわる必要がある。エスエス値を低く保つことで、雑味のない高品質なお酒を生み出すことができる。 |
総合的な水質評価 | エスエスは、BODやCODといった他の水質指標と組み合わせて総合的に判断することで、より正確な水質評価が可能になる。 |
洗米とSS
お酒造りの最初の大切な作業、洗米についてお話しましょう。洗米とは、精米されたお米を水で丁寧に洗い、表面についた糠や細かい塵などを落とす作業です。精米したばかりのお米は、一見すると綺麗に見えますが、実は糠の微粉や削りカスなどがたくさん残っています。これらを取り除くことで、雑味のないすっきりとしたお酒を造ることができます。
洗米には、様々な方法があります。昔ながらの手作業で行う方法から、専用の機械を使う方法まで、酒蔵によって様々です。いずれの方法でも、お米を傷つけずに、いかに効率よく汚れを落とすかが重要になります。洗う水の温度や時間も、お米の種類や目指すお酒の味わいに合わせて細かく調整されます。例えば、吟醸酒のように繊細な味わいを目指す場合は、低い温度の水で短時間だけ洗うことで、お米の旨味を逃がさないようにします。
さて、この洗米の際に気になるのが、排水に含まれるSS(浮遊物質量)です。SSとは、水に溶けずに浮遊している物質の総量を示すものです。洗米によってお米の表面の糠などが剥がれ落ち、これが排水に混じってSSの値を高める原因となります。洗米排水は白く濁って見えますが、これは、お米に含まれるデンプンやタンパク質などが水に溶け出したためです。
この洗米排水をそのまま川や海に流してしまうと、水質汚濁につながる可能性があります。そこで、酒蔵では様々な工夫を凝らして、洗米排水の処理に取り組んでいます。例えば、排水に含まれる固形物を沈殿させて分離する、微生物の働きを利用して分解するなど、環境への負荷を減らすための技術開発や設備投資に力を入れています。美味しいお酒を造るだけでなく、自然環境にも配慮した酒造りが、現代の酒蔵には求められているのです。
項目 | 内容 |
---|---|
洗米の目的 | 精米された米から糠や塵などを除去し、雑味のない酒を造るため。 |
洗米の方法 | 手作業から機械まで様々。米を傷つけずに効率よく汚れを落とすことが重要。水温や時間も米の種類や目指す酒によって調整。 |
洗米とSS | 洗米によって糠などが剥がれ落ち、排水に混じることでSS値が高くなる。 |
洗米排水の外観 | 白く濁って見える。デンプンやタンパク質が水に溶け出したため。 |
洗米排水の問題点 | そのまま排水すると水質汚濁につながる可能性がある。 |
洗米排水の処理 | 固形物を沈殿分離、微生物分解など、環境負荷を減らす技術開発や設備投資を実施。 |
酒蔵の課題 | 美味しい酒造りと自然環境への配慮の両立。 |
排水処理の重要性
酒蔵は、美味しいお酒を造るだけでなく、周辺の自然環境を守ることも大切にしています。酒造りにはたくさんの水が使われ、その過程で様々な種類の排水が発生します。お米を研いだときに出る排水だけでなく、タンクや瓶を洗う際にも排水は生まれます。これらをきちんと処理せずに川や湖に流してしまうと、水質が悪化し、生き物たちに悪影響を与えてしまうのです。
特に、排水の中に含まれる濁りの原因となる物質(浮遊物質)が多いと、水の中に光が届かなくなり、水草や藻の成長を妨げます。また、魚のエラを詰まらせたり、産卵場所を奪ったりすることもあります。さらに、水が濁ると景観も損なわれ、私たちの目を楽しませてくれる美しい川や湖の姿も失われてしまいます。
そこで、酒蔵では排水処理施設を設け、環境基準を満たすきれいな水になるよう、様々な工夫をしています。濁りの原因となる物質を取り除くのはもちろんのこと、お酒の製造過程で生じる有機物なども、微生物の働きなどを利用して分解しています。排水の水質は、いくつかの項目で細かくチェックされ、それぞれの基準値をクリアしなければなりません。
近年では、より効率的で環境に優しい排水処理技術が開発され、酒蔵でも積極的に導入が進められています。例えば、微生物の働きをさらに高める方法や、膜を使って細かい物質まで取り除く方法などがあります。こうした技術革新によって、酒造りは環境への負荷を低減し、持続可能な産業へと進化を続けています。美味しいお酒を楽しみながら、美しい自然も守っていく。それが、これからの酒造りの目指す姿と言えるでしょう。
未来のお酒造り
未来のお酒造りは、環境への配慮なしには語れません。酒造りには大量の水が必要であり、その水資源の保全は酒蔵にとって将来にわたる大きな課題です。限りある資源を大切に使い、無駄をなくす工夫が欠かせません。たとえば、仕込み水を使った後の排水は、微生物の働きで浄化してから自然に返すなど、徹底した排水処理を行い、周辺の川や海への負担を軽くすることが大切です。また、酒米作りにおいても、農薬や化学肥料の使用量を減らし、自然の力を生かした土づくりを行うことで、より環境に優しい酒造りが実現できます。
消費者の間でも、環境問題への関心は高まっており、環境に配慮したお酒を選ぶ人が増えています。ラベルに有機農法で栽培された酒米を使用していることや、再生可能エネルギーを利用して醸造していることなどを表示することで、消費者の共感を呼び、信頼を獲得することに繋がります。このような消費者の行動の変化は、酒蔵にとって更なる環境保全への取り組みを促す力となるでしょう。
未来のお酒造りは、伝統を守りながらも革新していく必要があります。先人たちが築き上げてきた技術や知恵を尊重しつつ、最新の科学技術や情報を積極的に取り入れ、環境負荷の少ない酒造りを目指さなければなりません。例えば、省エネルギー型の設備を導入したり、製造工程を効率化することで、エネルギー消費量を削減できます。また、地域との連携も重要です。地元の農家と協力して酒米を栽培したり、地域資源を活用した循環型社会の構築を目指すなど、持続可能な酒造りの仕組みづくりが求められています。未来を担う世代のためにも、豊かな自然環境を守りながら、美味しいお酒を造り続けられるよう、酒蔵はこれからも努力を続けていくことでしょう。
テーマ | 課題 | 取り組み |
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水資源の保全 | 酒造りに大量の水が必要であり、水資源の保全が重要。 | 仕込み水を使った後の排水を微生物の働きで浄化してから自然に返すなど、徹底した排水処理を行う。 |
環境に優しい酒米作り | 農薬や化学肥料の使用が環境に負荷を与える。 | 農薬や化学肥料の使用量を減らし、自然の力を生かした土づくりを行う。 |
消費者の意識変化 | 環境問題への関心が高まり、環境に配慮したお酒を選ぶ人が増加。 | 有機農法や再生可能エネルギー利用などをラベルに表示し、消費者の共感と信頼を獲得する。 |
伝統と革新の両立 | 伝統を守りつつ、環境負荷の少ない酒造りを行う必要がある。 | 先人の技術や知恵を尊重しつつ、最新の科学技術や情報を積極的に取り入れ、省エネルギー型の設備導入や製造工程の効率化を図る。 |
地域との連携 | 持続可能な酒造りの仕組みづくりが重要。 | 地元の農家と協力して酒米を栽培したり、地域資源を活用した循環型社会の構築を目指す。 |