お酒と珪藻土:清酒づくりの秘密兵器

お酒と珪藻土:清酒づくりの秘密兵器

お酒を知りたい

先生、お酒の作り方で『珪藻土』っていう言葉が出てきたんですけど、どういうものか教えてもらえますか?

お酒のプロ

はい。『珪藻土』は、とても小さな藻の仲間である珪藻の殻が、長い時間をかけて積み重なってできた土のことです。白っぽい色をしていて、小さな穴がたくさん開いているのが特徴です。

お酒を知りたい

小さな穴がたくさんあるんですか? なんでお酒作りに使うんですか?

お酒のプロ

その穴が、お酒をきれいにするのに役立つんです。お酒を珪藻土に通すと、にごりのもとになるものがその穴に引っかかって、きれいな透明なお酒になるんですよ。

珪藻土とは。

お酒の用語で「けいそうど」というものがあります。これは、珪藻という小さな藻の仲間の死骸が積み重なってできた白っぽい灰色の地層のことです。特に、鉄などの余計なものが少ないけいそうどをきれいにして、日本酒を濾過するときの補助剤として使います。

珪藻土とは

珪藻土とは

珪藻土とは、大昔の海や湖に生きていた、とても小さな植物プランクトン、珪藻の殻が長い年月をかけて積み重なってできた土のことです。 珪藻は、水の中に浮かんで生きる小さな生き物で、その殻はガラスと同じ成分でできています。顕微鏡で見ると、その殻には目に見えないほど小さな穴がたくさん開いています。この小さな穴が、珪藻土を濾過に適したものにしているのです。

珪藻土は、淡水と海水どちらの環境でも作られますが、お酒作りに使われるのは、ほとんどが淡水でできたものです。 海水でできたものには、塩分など様々なものが混ざっていますが、淡水でできたものは不純物が少なく、お酒の味を邪魔することがないからです。

珪藻の種類や堆積した場所、どれくらい昔にできたかによって、珪藻土の性質は大きく変わります。お酒作りのプロたちは、それぞれの蔵が目指す味や品質に合うように、様々な種類の珪藻土の中から、最適なものを選び抜いて使っています。 例えば、穴の大きさや、珪藻土に含まれる成分の違いによって、お酒の雑味を取り除く効果が変わったり、お酒の繊細な香りを調整できたりするのです。

世界中で様々な珪藻土が採掘されていますが、日本は質の高い珪藻土の産地として有名です。 特に、秋田県や石川県で採掘される珪藻土は、お酒作りに適していると言われており、多くの蔵元で愛用されています。これらの地域で採れる珪藻土は、不純物が少なく、お酒の風味を損なわないだけでなく、適度な濾過性能を持つため、お酒の雑味を取り除きつつ、必要な旨味や香りを残すことができるのです。このように、小さな生き物の殻が長い年月をかけて作り上げた珪藻土は、日本の伝統的なお酒作りにとって、なくてはならないものとなっています。

項目 内容
珪藻土の由来 大昔の植物プランクトン(珪藻)の殻の堆積物
珪藻の殻の成分 ガラスと同じ成分
珪藻土の特性 微細な穴が多く、濾過に適している
お酒作りに適した珪藻土 淡水由来のもの(不純物が少ない)
珪藻土の種類 珪藻の種類、堆積場所、年代によって性質が異なる
珪藻土の選定 蔵元が目指す味や品質に合わせて選定
珪藻土の効果 お酒の雑味除去、香り調整
日本の珪藻土産地 秋田県、石川県など(高品質で有名)

清酒づくりにおける役割

清酒づくりにおける役割

お酒造りにおいて、珪藻土はなくてはならないものです。お酒のもとである「もろみ」には、米の粒やお酒を作る小さな生き物など、色々なものが混ざっています。これらを取り除き、澄んだお酒にするために必要なのが「ろ過」という作業です。珪藻土はこのろ過作業で重要な役割を担っています。

珪藻土は、小さな穴がたくさん空いた土のようなものです。この小さな穴が、もろみの中の様々なものを捕らえ、澄んだ液体だけを通してくれます。ろ過には、「圧搾ろ過」と「自然ろ過」という二つの方法があります。「圧搾ろ過」は、圧力をかけて早くろ過する方法で、「自然ろ過」は、自然に液体が落ちるのを待つ方法です。どちらの方法でも珪藻土は必要不可欠です。

珪藻土を使うことで、雑味や濁りのない、すっきりとした味わいのお酒を作ることができます。また、ろ過の速度も上がり、お酒の品質を一定に保つことにも役立ちます。お酒蔵では、それぞれの酒の個性に合う珪藻土の種類や量、ろ過の方法を常に研究し、より良いお酒造りを目指しているのです。

このように、珪藻土は、お酒の繊細な味を守るための陰の立役者と言えるでしょう。普段はあまり目にすることはありませんが、美味しいお酒を飲むときには、珪藻土の働きに思いを馳せてみるのも良いかもしれません。

珪藻土の役割 ろ過方法 メリット
もろみから米粒や微生物などを取り除き、澄んだお酒にするためのろ過材 圧搾ろ過 雑味や濁りのないすっきりとした味わいのお酒、ろ過速度向上、お酒の品質安定
自然ろ過

珪藻土の種類と選定

珪藻土の種類と選定

珪藻土は、太古の植物性プランクトンの遺骸が堆積してできた土で、微細な穴が無数に空いているのが特徴です。この無数の穴が、濾過材としての優れた性能を生み出しています。清酒造りにおいても、醪(もろみ)から清酒を分離するために珪藻土濾過は欠かせない工程となっています。しかし、一口に珪藻土と言っても、その種類は実に様々です。産地や組成の違いによって、濾過の速度や清酒の味わいに影響を与えるため、蔵人たちは珪藻土選びに細心の注意を払っています。

まず、珪藻土の種類を決める上で重要な要素の一つが粒子の大きさです。粒子の大きさは濾過速度に直結し、粗い粒子の珪藻土は濾過速度が速く、細かい粒子の珪藻土は濾過速度が遅くなります。速く濾過しすぎると、清酒本来の旨味や香りが損なわれる可能性があり、逆に遅すぎると、雑味が出てしまう可能性があります。そのため、目指す酒質に合わせて最適な粒度を選ぶ必要があります。

次に注目すべきは、珪藻土に含まれる不純物の量です。鉄分などの不純物が多いと、清酒の色が濁ったり、金属のような不快な味が混じったりすることがあります。そのため、清酒濾過に用いる珪藻土は、不純物の少ない高純度のものが選ばれます。

珪藻土は、単に濾過するだけでなく、醪の中の成分を吸着する性質も持っています。これは、清酒の色や香りに大きな影響を与えます。吸着性の強い珪藻土を使うと、華やかな香りが薄れたり、色が変わってしまうことがあります。反対に、吸着性が弱すぎると、雑味や濁りが残ってしまう可能性があります。

このように、珪藻土の種類によって濾過の特性が異なるため、各酒蔵では様々な種類の珪藻土を試し、それぞれの酒に最適なものを選定しています。近年では、濾過性能をさらに高めた特殊な加工を施した珪藻土も開発され、清酒の品質向上に貢献しています。それぞれの酒蔵が理想とする味わいを追求するために、珪藻土選びは重要な要素と言えるでしょう。

珪藻土の特性 影響 清酒への影響
粒子の大きさ(粗い) 濾過速度が速い 旨味や香りが損なわれる可能性
粒子の大きさ(細かい) 濾過速度が遅い 雑味が出る可能性
不純物が多い 色が濁る、金属のような不快な味が混じる
吸着性が強い 醪の成分をよく吸着 華やかな香りが薄れる、色が変わる
吸着性が弱い 醪の成分をあまり吸着しない 雑味や濁りが残る可能性

安全性について

安全性について

お酒を造る過程で、濁りをなくして澄んだお酒にするために、珪藻土という土のようなものを使うことがあります。この珪藻土は、食べ物をきれいにするために使われる、安全だと認められたものを使っています。国が定めた厳しい基準をクリアし、安全性の検査もしっかり行われたものだけがお酒造りに使われます。ですから、お酒の中に珪藻土が残っていても、安全なので心配はいりません

しかし、この珪藻土の中には、結晶質シリカと呼ばれるものが含まれている場合があります。これは、息を吸うと体に良くない影響を与える可能性があります。お酒造りで使う珪藻土は安全なものですが、作業をする人たちは、この珪藻土の粉を吸い込まないように、マスクや防護服などでしっかり対策をしています。

実は、珪藻土には、食べ物に使うもの以外にも、工場などで使われるものなど、色々な種類があります。そして、食べ物に使うための珪藻土ではないものを、間違えてお酒造りに使ってしまうと、体に悪影響が出る可能性があります。ですから、珪藻土を買う時は、食べ物に使える安全なものかどうか、しっかりと確認することが大切です。ラベルをよく見て、何に使うための珪藻土なのかを確認し、お酒造りに安心して使える珪藻土を選びましょう。特に、家庭で手作りのお酒を造る場合は、この点に注意することが重要です。安全なお酒を造り、楽しく美味しく飲むために、正しい知識を持って、安全な材料を選びましょう

珪藻土の種類 安全性 使用用途 注意事項
食品用珪藻土 安全性が認められている お酒の濁り除去、食品の清澄化 国の基準をクリアし、検査済みのものを使用
お酒に残っていても安全
工業用珪藻土など 安全性が認められていない 工場など お酒造りに使用すると悪影響の可能性あり
誤使用に注意

補足:結晶質シリカは吸入すると体に悪影響を与える可能性があるため、作業者はマスクや防護服を着用

未来への展望

未来への展望

日本酒造りにおいて、珪藻土は濾過工程で欠かせない存在です。珪藻土は、酒の中に含まれるにごりを除去し、透明感のある美しい日本酒を生み出すために役立っています。しかし近年、この珪藻土を取り巻く環境に変化が訪れています。

珪藻土は天然の資源であるため、産出量が限られています。世界的な需要の増加や、産地で起こる自然災害などの影響を受けやすく、安定した供給を維持することが難しくなってきています。同時に、価格も上昇傾向にあり、日本酒の製造コストに影響を与えています。

こうした課題を解決するため、様々な取り組みが始まっています。珪藻土に代わる新たな濾過材の開発はその一つです。例えば、極めて小さな穴を持つ膜で濾過を行う「膜濾過」の技術は、濾過の効率を高め、エネルギー消費を抑え、濾過後の廃棄物を減らす効果が期待されています。他にも、様々な素材や技術を用いた濾過方法が研究開発されています。

同時に、珪藻土を持続可能な形で利用していくための取り組みも重要です。珪藻土の産地を多様化したり、採掘方法を工夫したり、使用後の珪藻土のリサイクル方法を確立するなど、環境への負担を減らしながら資源を有効活用していく必要があります。

日本酒は、日本の伝統的なお酒です。その伝統を守りつつ、同時に新しい技術や知識を積極的に取り入れることで、より高品質な日本酒造りが可能になります。未来の日本酒業界の発展のためには、伝統と革新の両立が鍵となるでしょう。

課題 取り組み
珪藻土の供給不安定性(産出量 limitations、需要増加、自然災害の影響)
  • 代替濾過材の開発(例: 膜濾過)
  • 珪藻土産地の多様化
  • 採掘方法の工夫
  • 使用後の珪藻土のリサイクル
珪藻土の価格上昇
  • 代替濾過材の開発(例: 膜濾過)