日本酒造りの要、掛流し

日本酒造りの要、掛流し

お酒を知りたい

先生、『掛流し』って、お酒造りでよく聞く言葉ですが、具体的にどういうことをするんでしょうか?

お酒のプロ

いい質問だね。『掛流し』とは、洗ったお米をタンクに入れて水に浸し、タンクの下から新しい水を入れ続けて、上から水をあふれさせる方法のことだよ。

お酒を知りたい

なるほど。ただ水を入れ替えるだけじゃなくて、下から入れて上からあふれさせるんですね。それには何か意味があるんですか?

お酒のプロ

そうだよ。この方法で15分から30分くらい水を流し続けることで、お米に含まれるカリウムやリン酸といった成分が減るんだ。そうすると、お酒のもとになる『醪(もろみ)』の発酵がゆっくりになる効果があるんだよ。

掛流しとは。

お酒を作る時の『掛流し』という言葉について説明します。『掛流し』とは、洗った後の白米を水に漬けるためのでかい入れ物に入れて、その入れ物の下から水を流し込み、上から水をあふれさせる方法のことです。だいたい15分から30分くらいこの方法で水を流し続けることで、お米に含まれているカリウムやリン酸といったものが減り、お酒のもとになる液体の発酵がゆっくりになる効果があります。

はじめに

はじめに

日本酒は、米と水、麹、酵母という簡素な原料から、深い味わいが生まれる醸造酒です。その製造方法は、古くから伝わる伝統的な技と、現代の技術が一つになった、とても繊細なものです。数ある工程の中でも、洗米を終えた後の白米を水に浸す「掛流し」は、日本酒の味わいを決める重要な工程です。

掛流しは、単に米の表面についた糠や汚れを取り除くだけではありません。米にどれだけの水を吸わせるのか、どれだけの時間をかけて吸わせるのかによって、米の硬さや水分量が変わり、これこそが日本酒の出来栄えを左右する重要な要素となります。掛流しで米に含まれる水分量を調整することで、後の工程である蒸米、麹づくり、酒母づくり、醪仕込み、そして発酵に大きな影響を与えます。

例えば、掛流しの時間が短いと、米の中心まで十分に水が浸透せず、蒸米の際にムラが生じ、麹菌の繁殖が均一になりません。結果として、雑味のある日本酒になってしまうことがあります。反対に、掛流しの時間が長すぎると、米が水を吸いすぎて柔らかくなり、蒸米がベタベタになり、これもまた望ましい状態ではありません。最適な掛流しの時間と水加減は、使用する米の品種、その年の米の状態、そして目指す日本酒の風味によって異なります。杜氏は、長年の経験と勘、そして五感を頼りに、その都度最適な掛流しを判断します。

このように、一見単純に見える掛流しという工程一つとっても、杜氏の技と経験が凝縮されており、日本酒の奥深い味わいを生み出すために欠かせない工程と言えるでしょう。掛流しは、まさに日本酒づくりの出発点であり、その後の全ての工程の土台となる重要な役割を担っているのです。日本酒を味わう際には、ぜひこの掛流しの重要性を思い出し、その繊細な味わいの奥に隠された、杜氏の技術と情熱を感じてみてください。

掛流しの方法

掛流しの方法

掛け流しとは、酒造りの初期段階、洗米を終えた後の白米を水に浸す工程で行われる独特の技法です。専用の浸漬タンクに白米を入れ、タンクの下部からゆっくりと水を注ぎ込みます。そして、タンクの上部から水が溢れ出るようにすることで、米の表面だけでなく内部までじっくりと水を浸透させていきます。

この掛け流し作業は、通常15分から30分程度かけて行われます。タンクに絶えず水を流し続けることで、米の表面に付着している糠や、精米の際に生じた細かい粉などの不純物を効果的に洗い流すことができます。同時に、米粒の内部にも水が浸透し、吸水が始まります。この吸水過程で、米の内部に含まれているカリウムやリン酸などの成分が、水に溶け出していきます。

これらの成分は、後の発酵過程で、酵母の働きに大きく影響を与える重要な要素です。例えば、カリウムが多すぎると酵母の発酵が活発になりすぎてしまい、雑味のあるお酒になってしまうことがあります。反対に、リン酸が不足すると、酵母が十分に活動できず、発酵がうまく進まない可能性があります。

掛け流しはこのような成分の調整という重要な役割を担っており、米の表面を清浄にすると同時に、米内部の成分濃度を適切な状態に整え、良質な酒造りのための土台を築く、繊細で重要な工程と言えるでしょう。美味しいお酒は、この掛け流しでの丁寧な仕事から始まっているのです。

工程 時間 目的 効果
掛け流し 15分〜30分 洗米後の白米を水に浸す
  • 米の表面と内部に水を浸透させる
  • 糠や粉などの不純物を洗い流す
  • 米内部のカリウムやリン酸などの成分を調整する
  • 酵母の働きに影響を与える成分のバランスを整える
  • 良質な酒造りのための土台を築く

掛流しの効果

掛流しの効果

日本酒造りにおいて「掛流し」という技法は、酒の味に大きな影響を与えています。 これは、蒸した米を仕込み水に浸す際、水を流し続ける方法のことです。一見すると単純な作業に思えますが、実は酒の質を決める重要な工程なのです。

掛流しを行う最大の利点は、米の表面に付着した不要な成分を取り除けることです。蒸米には、カリウムやリン酸といった成分が含まれています。これらの成分は、醪(もろみ)の発酵に影響を与え、過剰な場合は雑味や荒い香り、望ましくない風味を生み出す原因となります。掛流しによってこれらの成分を洗い流すことで、発酵を穏やかに進め、繊細で滑らかな味わいの酒に仕上げることができます。

また、発酵速度のコントロールも掛流しの重要な役割です。発酵が速すぎると、荒々しい風味になりやすく、逆に遅すぎると、発酵が不十分で、目指す風味が出ないことがあります。掛流しは、米に含まれる成分を調整することで、発酵速度を最適な状態に保ち、酒質の安定化に貢献します。

さらに、掛流しは米の吸水ムラを防ぐ効果も持ちます。米全体を均一に水に浸すことで、醪全体がムラなく発酵し、安定した品質の酒造りに繋がります。米の表面に付着した成分を洗い流し、発酵速度を調整し、均一な吸水を促す。これらの効果が相まって、掛流しは日本酒の繊細な味わいを支える、欠かせない技法となっているのです。

掛流しの効果 詳細
不要な成分の除去 蒸米に含まれるカリウムやリン酸などの過剰な成分を洗い流し、雑味や荒い香りを抑え、繊細で滑らかな味わいに仕上げる。
発酵速度の調整 米に含まれる成分を調整することで発酵速度を最適な状態に保ち、荒々しい風味や発酵不足による風味の欠如を防ぎ、酒質を安定させる。
吸水ムラの防止 米全体を均一に水に浸すことで醪全体がムラなく発酵し、安定した品質の酒造りに繋がる。

味わいに及ぼす影響

味わいに及ぼす影響

酒造りにおいて、醪(もろみ)を搾る際に用いる技法「掛流し」は、日本酒の味わいを大きく左右する重要な要素です。醪を搾らずに自然と流れ落ちる液体を集めるこの方法は、単なる製造工程の一部ではなく、職人の経験と技術が凝縮された繊細な作業です。

掛流しによって生まれる日本酒は、雑味が少なく、非常にすっきりとした味わいが特徴です。これは、醪に含まれる不要な成分が自然に除去されるためです。特に、発酵の過程で生成されるカリウムやリン酸といった成分は、日本酒の味わいに大きな影響を与えます。掛流しによってこれらの濃度が適切に調整されることで、発酵が穏やかに進み、米本来の旨味や香りが最大限に引き出されます。

醪を搾る方法では、どうしても圧力が加わるため、雑味や渋みが出てしまうことがあります。しかし、掛流しは重力のみを利用するため、醪への負担が少なく、繊細な香味を損なうことなく、純粋な酒が得られます。雑味が少ない分、米の甘み、旨味、香りが際立ち、透明感のあるクリアな味わいになります。

さらに、掛流しによって得られる均一な発酵も、日本酒の味わいに深みと奥行きを与える重要な要素です。タンクの底に沈殿しがちな醪も、掛流しでは均一に流れ落ちるため、発酵ムラが起こりにくく、安定した品質の日本酒が生まれます。

洗米方法や浸漬時間、醪の温度管理など、掛流しの条件は多岐にわたり、その微妙な調整によって、蔵元はそれぞれが目指す理想の味わいを表現しています。例えば、洗米時間を短くすれば、米の表面に糠が残るため、力強い味わいの酒になり、長くすれば淡麗な酒となります。また、醪の温度が高いほど発酵は速く進みますが、低いほどゆっくりと進み、繊細な香味になります。このように、掛流しは日本酒造りの職人技とも言えるものであり、その奥深さは日本酒の多様な味わいを生み出す源泉となっています。

特徴 効果 詳細
自然濾過 雑味減少、すっきりした味わい 醪に含まれる不要成分(カリウム、リン酸など)が自然に除去
重力を利用 醪への負担軽減、繊細な香味保持 圧搾による雑味や渋みの発生を防ぐ
均一な発酵 深みと奥行きのある味わい、安定した品質 発酵ムラが起こりにくい
条件調整による多様な味わい 蔵元独自の表現 洗米時間、浸漬時間、醪の温度管理など
洗米時間の影響 味わいの調整 短時間:力強い味わい、長時間:淡麗な味わい
醪の温度の影響 発酵速度と香味の調整 高温:速い発酵、低温:ゆっくりとした発酵、繊細な香味

まとめ

まとめ

お酒造りの世界において、醪(もろみ)を搾る前の大切な準備段階である「掛流し」は、日本酒の味わいを左右する非常に重要な工程です。お酒の決め手となる米の成分を調整し、発酵をうまく操ることで、理想のお酒へと導く、まさに職人技が光る工程と言えます。掛流しとは、蒸した米、麹、仕込み水を混ぜ合わせた醪を、搾る前に大きな布袋に流し込む作業のことです。醪の重みだけで自然に濾過されることで、雑味のないクリアな酒質が得られます。この時、醪を流し込む速度や量、時間などを細かく調整することで、最終的なお酒の味わいを調整します。例えば、醪をゆっくりと流し込むと、よりクリアですっきりとした味わいに仕上がります。反対に、早く流し込むと、濃厚でコクのある味わいとなります。
掛流しで重要なのは、醪の状態を見極めることです。米の品種やその年の出来、目指すお酒の種類によって、醪の状態は変化します。経験豊富な職人は、醪の色合いや粘り具合、香りなどを五感で確かめ、最適な掛流しの時間や方法を判断します。醪の状態を見極めるには長年の経験と知識が必要であり、まさに蔵元独自の技が凝縮されていると言えるでしょう。
一見すると単純な作業に思える掛流しですが、そこには日本酒造りの奥深さが凝縮されています。蔵人たちは、醪の状態を常に観察し、絶妙なタイミングと方法で掛流しを行います。この繊細な作業によって、雑味のないクリアな味わい、華やかな香り、そして奥深いコクが生まれるのです。日本酒を味わう際には、ぜひこの「掛流し」という工程にも思いを馳せてみてください。一杯のお酒の中には、蔵人たちの技術と情熱、そして自然の恵みが詰まっていることを実感できるはずです。そして、様々な日本酒を飲み比べることで、それぞれの蔵元の個性が感じられ、日本酒の世界をより深く楽しむことができるでしょう。

工程 説明 効果 ポイント
掛流し 蒸した米、麹、仕込み水を混ぜ合わせた醪を、搾る前に大きな布袋に流し込む作業。醪の重みだけで自然に濾過される。 雑味のないクリアな酒質を得る。 醪を流し込む速度や量、時間で最終的なお酒の味わいを調整する。
ゆっくりとした掛流し クリアですっきりとした味わい
速い掛流し 濃厚でコクのある味わい
醪の状態の見極め 米の品種やその年の出来、目指すお酒の種類によって変化する醪の状態を、色合いや粘り具合、香りなどを五感で確かめる。 最適な掛流しの時間や方法の決定 長年の経験と知識が必要な蔵元独自の技