あらばしり

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日本酒

あらばしり:最初の雫に込められた旨さ

お酒作りには、様々な工程があり、その中で生まれる特別な酒に「あらばしり」と呼ばれるものがあります。この「あらばしり」という名前は、文字通り「荒走り」という言葉から来ています。これは、まだ人の手が何も加わっていない、自然のままの状態を表す言葉です。では、一体どのような工程で生まれるのでしょうか。お酒作りの最終段階、お酒を搾る工程で「あらばしり」は生まれます。発酵を終えた醪(もろみ)は、大きな袋に詰められます。この袋は「酒袋」と呼ばれ、昔は綿や麻などで作られていました。そして、この酒袋を幾重にも重ねて、「槽(ふね)」と呼ばれる大きな木製の容器に積み重ねていきます。この槽に積み重ねられた酒袋は、自らの重みで自然と圧力がかかり、その圧力によって醪(もろみ)からお酒が搾り出されてきます。この時、一番最初に自然に流れ出てくる部分が「あらばしり」と呼ばれています。まだ人の手で何も加えられていない、自然の重みだけで流れ出る最初の雫。まさに「荒走り」という言葉がぴったしです。搾る作業を始める前に、重みだけで自然と流れ出るこのお酒は、雑味のない、純粋な旨みが凝縮されていると珍重されています。最初の部分のため、量も限られています。その希少性もあいまって、「あらばしり」は、お酒好きの間では特別な酒として扱われています。後に、圧力をかけて搾るお酒とは異なり、雑味がないすっきりとした味わいの中に、醪(もろみ)本来の旨みが凝縮されているのが「あらばしり」の特徴です。そのフレッシュな香りと力強い味わいは、まさに生まれたてのお酒の生命力をそのまま感じさせてくれます。機会があれば、ぜひ一度味わってみてください。