あんずの核

記事数:(1)

リキュール

アマレットの魅力:杏の核が生む魅惑の味わい

杏の核の独特な香りとほろ苦さが特徴的な甘美な飲み物、アマレット。その起源には、芸術とロマンスが織りなす美しい物語が隠されています。一説には、16世紀初頭のイタリア、サローノの小さな宿屋でその物語は始まります。かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの弟子、ベルナルディーノ・ルイーニが、教会のフレスコ画制作のために滞在していた時のことです。美しい女主人に心を奪われたルイーニは、彼女が杏の核を使って作った琥珀色のリキュールを贈られ、その芳醇な香りと味わいに魅了されたと言われています。この秘伝の飲み物が、後にアマレットとして世界に広まったと伝えられています。一方で、アマレットの起源をディ・サローノ家とする説もあります。18世紀にディ・サローノ家が初めてアマレットを製造販売したという記録が残されているためです。彼らが代々受け継いできた秘伝のレシピこそ、現在のアマレットの原型となっているのかもしれません。いずれの説が真実であっても、アマレットの誕生には、イタリアの豊かな食文化と歴史が深く関わっていることは間違いありません。古くから杏の栽培が盛んだったイタリア北部では、杏の核を様々な形で利用してきた歴史があります。その中で、杏の核の持つ独特な風味を活かしたリキュールが生まれたことは、自然な流れだったのかもしれません。ルネサンス期から現代まで、アマレットはイタリアの食卓に欠かせない存在であり続け、その歴史と伝統を静かに物語っているのです。