ため

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日本酒

酒造りの要、ためについて

お酒造りには、様々な道具が欠かせません。その中でも、「ため」と呼ばれる桶状の容器は、酒蔵で働く人々の両腕とも言える重要な存在です。この「ため」は、およそ二十升、つまり二十リットルほどの容量を持ち、人の手で持ち運びができる大きさです。酒蔵では、様々な場所でこの「ため」を目にすることができます。仕込み水や蒸米、麹など、お酒造りに必要な原料を運ぶのも「ため」の役割です。また、お酒造りの過程で生まれる、醪(もろみ)や酒母(しゅぼ)といった液体も「ため」を使って移動させます。さらに、出来上がったお酒を瓶詰めする際にも、「ため」からお酒を移し替える作業が行われます。「ため」の材質は主に木や琺瑯です。木の「ため」は、杉などの木材で作られており、お酒に独特の風味を与えることもあります。一方、琺瑯の「ため」は、清掃がしやすく、雑菌の繁殖を抑えることができるため、衛生管理の面で優れています。酒蔵では、用途に合わせて様々な大きさの「ため」が使い分けられています。大きな「ため」は、大量の仕込み水を運ぶ際に使用され、小さな「ため」は、酒母や醪の温度管理など、繊細な作業に用いられます。このように、「ため」は、お酒造りの様々な工程で活躍し、酒蔵では無くてはならない存在です。まるで酒蔵の血管のように、様々な液体を運び、お酒造りを支えているのです。