
お酒の世界の濾過:ケーク濾過とは?
お酒造りにおいて、澄んだ美しいお酒を生み出すためには、様々な工程が必要です。その中でも、お酒に含まれるにごりの元となる微細な粒を取り除く「濾過」は、お酒の見た目だけでなく、味わいにも大きく影響する重要な工程です。濾過には様々な種類がありますが、今回は「ケーク濾過」と呼ばれる方法について詳しく見ていきましょう。ケーク濾過は、その名の通り、濾過によって「ケーキ」のような固形物が形成される濾過方法です。濾材と呼ばれる布や金属の網などを用いて、お酒を濾していきます。この時、濾材の表面に微細な粒子が積み重なり、次第に層を成していきます。この層こそが「ケーク」と呼ばれるもので、このケーク自体がさらに濾材としての役割を果たし、より細かい粒子を捕らえていくのです。ケーク濾過の利点は、他の濾過方法に比べて、非常に細かい粒子まで除去できることです。そのため、雑味やにごりのない、透明感のあるお酒を造ることができます。日本酒、ワイン、ビールなど、様々なお酒造りでこのケーク濾過は活用されています。日本酒では、醪(もろみ)と呼ばれる発酵後の液体から、酒粕と呼ばれる固形分を取り除く際にケーク濾過が用いられます。ワインでは、発酵後のワインから酵母や果肉片などを取り除き、透明感のある美しいワインに仕上げるために利用されます。ビールにおいても、麦汁からホップのカスなどを除去し、クリアな味わいを引き出すために重要な役割を果たしています。ケーク濾過は、濾過するお酒の種類や求める仕上がりによって、濾材の種類や濾過の速度、圧力などを調整する必要があります。例えば、日本酒の繊細な風味を損なわないためには、目の細かい濾材を用いたり、濾過の速度を遅くしたりする工夫が凝らされています。このように、一見地味な工程に思える濾過ですが、職人の経験と技術が活かされた、お酒造りには欠かせない奥深い技術なのです。濾過の工程を知ることで、普段何気なく飲んでいるお酒の味わいを、より深く楽しむことができるでしょう。