アミロース

記事数:(2)

日本酒

日本酒と米:粳米の重要性

お酒造りは、古くから日本で親しまれてきた技であり、その出来栄えを左右する大切な要素がいくつかあります。中でも原料となるお米は、お酒の味わいを決める上で欠かせないものです。普段私たちが口にするお米とは違い、お酒造りに適したお米は「酒造好適米」と呼ばれ、幾つかの種類があります。酒造好適米の中でも、広く使われているのがうるち米です。うるち米は、私たちが毎日食べているご飯と同じ種類ですが、お酒造りに使う場合は、お米の性質がお酒の風味や香りに大きく影響します。粒の大きさ、タンパク質の含有量、そして心白と呼ばれる中心部分の大きさなど、様々な要素が関わってきます。特に心白は、お酒のもととなるでんぷんが豊富に含まれているため、大きな心白を持つお米は、良質なお酒を造る上で大変重要です。お酒を造る蔵では、それぞれの酒造好適米の特徴を良く理解し、造りたいお酒の種類に合わせて最適なお米を選びます。例えば、華やかな香りを目指す場合は、特定の香気成分を多く含むお米を選びますし、ふくよかな味わいを求めるなら、でんぷん質が豊富なお米を選びます。また、同じ種類のお米でも、産地や栽培方法によって品質が変わるため、蔵元は常に様々な産地のお米を吟味し、その年の気候条件なども考慮しながら、最良のお米を厳選しています。このように、美味しいお酒を造るためには、まず良質なお米を選ぶことから始まります。お米の品質は、お酒の質に直結するため、蔵元は米作りからこだわり、農家と協力してお米作りに取り組む場合もあります。まさに、お酒造りは米作りから始まるといっても過言ではありません。そして、厳選されたお米を丁寧に扱い、伝統の技で醸すことで、初めて芳醇な香りと深い味わいを堪能できる、極上のお酒が生まれるのです。
日本酒

アミロース:日本酒の甘味を決める成分

日本酒は、米を原料とした醸造酒であり、その風味や味わいは原料米の成分に大きく左右されます。米の主成分である澱粉は、アミロースとアミロペクチンという二種類の高分子化合物からできています。この二つの成分の割合の違いが、日本酒の味わいに変化をもたらすのです。アミロースは、ぶどう糖が鎖のように直線状につながった構造をしています。このアミロースは、米粒の中で水分を吸収しにくく、蒸米にした際に硬くなりやすい性質を持っています。そのため、麹菌が米の内部まで入り込みにくく、ゆっくりと糖化が進むため、すっきりとした淡麗な味わいの日本酒になりやすいのです。一方、アミロペクチンは、ぶどう糖が枝分かれした複雑な構造をしています。こちらは、米粒の中で水分を吸収しやすく、蒸米は柔らかく仕上がります。麹菌が米の内部まで入り込みやすく、糖化も早く進むため、濃厚で甘味が強い日本酒になりやすいのです。このように、アミロースとアミロペクチンの割合は、日本酒の味わいを決める重要な要素となります。酒造りに用いる米は、「酒造好適米」と呼ばれ、一般的にアミロース含有量が少ない品種が選ばれています。山田錦や五百万石といった有名な酒造好適米も、アミロペクチンの含有量が高く、芳醇な香りと豊かな味わいの日本酒を生み出すのに適しているのです。しかし、近年では、あえてアミロース含有量の高い米を用いて、すっきりとした淡麗辛口の日本酒を造る酒蔵も増えてきており、多様な日本酒の味わいが楽しめるようになっています。つまり、日本酒の甘さだけでなく、香りや口当たり、全体の風味も、米の成分によって大きく変わるのです。