アランビック

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ブランデー

アランビックシャランテ:コニャックの魂

コニャックの深い味わいを生み出す蒸留器、アランビックシャランテ。その独特な姿は、何世紀も前から受け継がれてきた伝統の証です。まるで洋梨のような丸みを帯びた形で、銅でできたこの蒸留器は、大きく3つの部分に分かれています。まず、ブドウの絞り汁を発酵させて作ったお酒を最初に温める初留釜。ここで、お酒の大切な香り成分が引き出されます。アランビックシャランテは、この初留釜を直接火で温めることで、より豊かで複雑な香りを生み出します。次に、初留釜で温められたお酒をさらに温める再留釜。初留釜とほぼ同じ形で、これも銅でできています。ここで、お酒に含まれる不純物を取り除きながら、より純粋なお酒と、より繊細な香りを抽出していきます。最初の温めでは取りきれなかった、隠れた香り成分まで丁寧に集めることで、コニャック特有の奥深い味わいが生まれます。最後に、温められたお酒の蒸気を冷やして液体に戻す冷却器。ここで、熱い蒸気がゆっくりと冷やされ、再び液体のお酒へと姿を変えます。冷却器の働きによって、コニャックは舌触りの良い、滑らかな味わいになります。アランビックシャランテは、この3つの部分の巧みな組み合わせと、銅という素材の特性によって、複雑で繊細な香りのコニャックを生み出します。銅は熱を伝えるのが得意なため、お酒を温める温度を細かく調整することができます。さらに、お酒に含まれる好ましくない硫黄の成分を取り除き、味を良くする効果も持っています。このように、アランビックシャランテは、単式蒸留でありながらも、その独特な構造と銅の特性によって、比類のない風味を持つコニャックを生み出す、まさにコニャックの心ともいえる存在なのです。
スピリッツ

蒸溜の心臓、らんびき

お酒造りにおいて、蒸留は欠かせない工程です。香り高く、風味豊かなお酒を生み出すために、加熱と冷却を巧みに利用した蒸留という技法が用いられています。蒸留とは、お酒のもととなる液体を加熱し、そこから発生する蒸気を集め、それを冷やすことで再び液体に戻す作業のことです。この一連の作業によって、アルコールや独特の香りの成分が元の液体から分離され、より純度の高い、風味豊かなお酒が作られます。蒸留を行うためには、専用の装置が必要です。その装置こそが蒸留器であり、様々な種類が存在します。数ある蒸留器の中でも、「らんびき」と呼ばれるものは単式蒸留器に分類されます。この「らんびき」は、一度の加熱と冷却というシンプルな工程で蒸留を行うのが特徴です。一般的な蒸留器では複数回の加熱と冷却を繰り返すものもありますが、「らんびき」は一度きりの工程で蒸留を行うため、原料本来の持ち味や個性が際立つお酒が出来上がります。そのため、ウイスキーやブランデーなど、複雑で奥深い味わいが求められるお酒造りで特に重宝されています。「らんびき」の形にも特徴があります。玉ねぎのような丸い形をしたポットと、そこから伸びる細長い管が特徴的で、この独特の形状も蒸留に重要な役割を果たしています。丸いポット部分で原料をじっくりと加熱し、発生した蒸気は細長い管を通って上部へと移動します。そして、管の中で冷やされた蒸気は再び液体へと戻り、管の先からゆっくりと滴り落ちます。このシンプルな構造が、原料の繊細な風味を損なうことなく、最大限に引き出すことを可能にしているのです。このように、蒸留は単なる工程ではなく、お酒の風味や個性を決定づける重要な役割を担っています。「らんびき」のような単式蒸留器を用いることで、原料の個性を最大限に活かした、風味豊かなお酒が生まれるのです。