
魅惑のカカオ・リキュールの世界
よく似た名前で混同されがちですが、チョコレートを溶かして作るのがカカオ・リキュールではありません。チョコレートとカカオ・リキュールは、その製法からして全く異なるものなのです。カカオ・リキュールを作るには、まず焙煎したカカオ豆を香味酒に使われるようなお酒に漬け込みます。これは、カカオ豆が持つ独特の香ばしい風味や苦味、渋味などをじっくりと抽出するためです。十分に香りが移った後、漬け込んだお酒を濾過し、蒸留などの作業を行います。こうしてカカオの風味を凝縮したものがベースとなります。その後、砂糖を加えて甘みとコクを調整することで、初めてカカオ・リキュールが完成します。一方、チョコレートはカカオ豆からカカオマスやカカオバターを取り出して作られます。カカオマスはカカオ豆をすり潰したペースト状のもので、チョコレートの風味の土台となるものです。カカオバターはカカオ豆から抽出される油脂で、チョコレート独特の滑らかさを生み出します。これらのカカオ成分に砂糖や粉乳などを加えて練り合わせ、型に流し込んで固めることで、私たちがよく知る板チョコが出来上がります。このように、カカオ・リキュールとチョコレートでは製造方法が根本的に違うため、風味や香りにも違いが現れます。チョコレートはカカオの風味に加えて、砂糖やミルクなどの香りが溶け合い、まろやかで濃厚な味わいが特徴です。対して、カカオ・リキュールはアルコールをベースとしているため、カカオ本来の香りがより際立ち、後味はすっきりとしたものになります。また、チョコレートにはないアルコール度数もカカオ・リキュールならではの特徴です。一般的にカカオ・リキュールは20度前後のお酒として楽しまれています。同じカカオ豆を原料としながら、異なる製法によって生まれるチョコレートとカカオ・リキュール。それぞれの個性を楽しんでみてはいかがでしょうか。