キルン

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ウィスキー

ウイスキーの香りを作る窯、キルン

お酒作りにおいて、麦芽の乾燥は風味を決める肝心な工程です。この乾燥工程で欠かせないのが、麦芽乾燥室、いわゆる「キルン」です。キルンは、石を組み上げて作られた窯のような部屋で、床にはいくつもの穴が開いています。その穴の下で火を焚き、発生した熱気をキルンの床全体に送り込みます。湿った麦芽をこのキルンの床一面に薄く広げ、下からじっくりと温風を送り込むことで、麦芽を乾燥させていきます。この乾燥工程は、単に水分を飛ばすだけではありません。お酒の風味の決め手となる大切な役割を担っているのです。乾燥の際に使われる燃料の種類や、焚き加減、乾燥にかける時間などによって、麦芽の風味は大きく変化します。例えば、ピートと呼ばれる草炭を燃料に用いると、麦芽に独特のスモーキーな香りがつきます。ピートの量や乾燥時間によって、スモーキーフレーバーの強弱を調整することが可能です。また、ピート以外の木材を燃料に用いると、また違った香りが麦芽に付きます。かつては、どのお酒の製造所にもこのキルンがありました。それぞれの製造所が、自前のキルンで麦芽を乾燥させ、独自の風味を追求していました。しかし、時代が変わり、今では大麦麦芽の精麦を行っていない製造所が増えました。そのため、キルンを持たない製造所も多くなっています。精麦とは、大麦を発芽させて乾燥させた麦芽を乾燥させる前の状態に戻す作業のことです。それでも、今もなお自社のキルンで麦芽の乾燥まで行っている製造所もあります。彼らは、昔ながらの製法を守り、燃料の種類や乾燥時間を調整することで、お酒の風味を細かく調整し、他にはない独自の個性を生み出しています。まさに、キルンは、お酒作りにおける職人技の象徴と言えるでしょう。