
酒精強化ワインの世界を探る
酒精強化ワインとは、読んで字のごとく、アルコール度数を高めたワインのことです。通常のワインは、葡萄の搾り汁に含まれる糖分を、酵母がアルコールに変えることで作られます。この糖分がアルコールに変わる過程を、発酵といいます。糖分がすべてアルコールに変わると、酵母は活動できなくなり、発酵は止まります。酒精強化ワインは、この発酵の最中、あるいは発酵が終わった後に、ブランデーのような蒸留酒を加えることで、アルコール度数を15度から22度ほどにまで高めています。この一手間が、ワインに独特の風味と奥深い味わい、そして長期間の保存を可能にする鍵なのです。酒精強化ワインは、世界中で様々な種類が作られており、それぞれの土地で独自の製法や味わいが受け継がれてきました。例えば、スペインのシェリー酒は、ソレラシステムと呼ばれる独特の熟成方法で知られています。これは、様々な熟成年数の原酒を混ぜ合わせることで、均一な品質と複雑な香りを生み出す伝統的な技法です。また、ポルトガルのポートワインは、発酵途中にブランデーを加えることで、甘みと力強い風味を両立させています。フランスの酒精強化ワインとしては、南フランスの甘口ワインであるバン・ナチュレルがあります。これは、発酵を止めることなく、葡萄の糖分を限界までアルコールに変えることで、自然な甘みと高いアルコール度数を実現しています。このように、酒精強化ワインは、産地によって製法も風味も多種多様です。それぞれの土地の風土や文化が、ワインに個性を与えていると言えるでしょう。古くから人々に愛されてきた酒精強化ワイン。その歴史は、大航海時代まで遡ります。当時の船旅は長く、ワインは航海の途中で腐ってしまうことがよくありました。そこで、ワインの保存性を高めるために、アルコールを添加するようになったのが、酒精強化ワインの始まりと言われています。現代では、食前酒や食後酒として楽しまれることが多く、チーズやデザートとの相性も抜群です。長い歴史の中で培われた、酒精強化ワインの魅力を、ぜひ味わってみてください。