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ウィスキー

ウイスキー職人、ブレンダーの世界

ウイスキー作りは、様々な工程を経てようやく完成しますが、その最終段階で、製品の風味を決定づける重要な役割を担うのが、巧みな技を持つ職人、ブレンダーです。蒸留所で生み出された多様な原酒は、まさに個性豊かな楽器のようです。ブレンダーは、まるでオーケストラの指揮者のように、それぞれの原酒が持つ独特の風味を深く理解し、それらを絶妙なバランスで組み合わせることで、目指す味わいを作り上げていきます。原酒は、大麦の種類や仕込み水、発酵、蒸留の方法、貯蔵樽の種類や熟成期間など、様々な要因によって香りが変化します。甘い香り、スモーキーな香り、フルーティーな香り、スパイシーな香りなど、その種類は多岐に渡ります。ブレンダーは、これらの原酒を五感すべてを使って丁寧に分析し、どの原酒をどのくらいの割合でブレンドすれば、目指すウイスキーの風味になるのかを判断します。この作業は、単に原酒を混ぜ合わせるという単純なものではありません。長年の経験と鍛錬によって培われた繊細な味覚と嗅覚、そして深い知識が求められます。ほんのわずかな配合の違いが、ウイスキーの味わいを大きく左右するからです。ブレンダーは、過去のブレンド記録を参考にしながら、試行錯誤を繰り返し、微妙な調整を何度も重ねて、ようやく一つのウイスキーを完成させます。目指す味わいを安定して供給し続けることも、ブレンダーの重要な仕事です。ウイスキーは生き物であり、同じように作っても、全く同じ味にはなりません。そのため、ブレンダーは常に原酒の状態をチェックし、ブレンドの配合を微調整することで、常に一定の品質を保つ努力をしています。このように、ブレンダーは、ウイスキー作りにおいて、まさに職人芸と言える高度な技術と経験、そしてたゆまぬ努力で、私たちに最高のウイスキーを届けてくれているのです。
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ウイスキーの香り:トップノート

お酒をたしなむ時、まず杯に注いだ瞬間から漂う香りが私たちの嗅覚をくすぐります。この最初の香りは「一番最初の香り」と呼ばれ、お酒を味わう体験の始まりを彩る大切な要素です。まるで演奏会の序曲のように、これから始まる味の調和を予感させる、軽やかで華やかな香りが特徴です。杯を鼻に近づけた瞬間に広がるこの香りは、お酒の種類や熟成の仕方によって大きく変わり、それぞれが独特な表情を見せてくれます。樽由来のバニラや蜜のような甘い香り、果実のような柑橘系の香り、あるいは草木のすがすがしい香りなど、その種類の豊富さには驚かされます。例えば、大麦を原料とするお酒では、軽く焼いたパンのような香ばしい香りと共に、蜂蜜や花のような甘い香りが感じられることがあります。これは、原料の大麦の風味と、熟成樽からの香りが複雑に混ざり合って生まれるものです。一方、米を原料とするお酒では、白い花のような繊細な香りと共に、ほのかに甘い香りが漂うことがあります。これは、米本来の持つ上品な香りと、発酵・蒸留によって生まれる香りが織りなすハーモニーです。また、芋を原料とするお酒では、大地を思わせる力強い香りと共に、フルーティーな香りが感じられることがあります。これは、芋の独特な風味と、熟成による変化がもたらす複雑な味わいを予感させます。このように、一番最初の香りは、お酒の種類や製法によって千差万別です。そして、この最初の香りは、お酒全体の印象を決めるほど大切で、その後の味わいへの期待を高めてくれるのです。まるで絵画の最初の筆致、音楽の最初の音符のように、一番最初の香りは、私たちを魅惑的なお酒の世界へと誘う、大切な入り口と言えるでしょう。