
ピュア・ポットスチルウイスキー:アイルランドの魂
ピュア・ポットスチルウイスキー。耳慣れない名前ですが、これはアイルランドのウイスキー造りの歴史と深く結びついた特別な蒸留酒です。その起源は18世紀のアイルランドに遡ります。当時、大麦の麦芽には税金がかけられていました。そこで、ウイスキー造りの人々は、麦芽への課税を避けるため、麦芽化していない大麦を麦芽に加えてウイスキーを造るようになりました。これがピュア・ポットスチルウイスキーの始まりと言われています。ピュア・ポットスチルウイスキー造りには欠かせないのが単式蒸留器です。単式蒸留器は、蒸留釜と呼ばれる銅製のポットスティルで、原料を繰り返し蒸留する昔ながらの蒸留器です。18世紀のアイルランドでは、この単式蒸留器が広く使われていました。この単式蒸留器で、麦芽と麦芽化していない大麦を混ぜ合わせたもろみを蒸留することで、独特の風味と奥行きを持つピュア・ポットスチルウイスキーが生まれました。19世紀に入ると、連続式蒸留器が発明され、世界的にウイスキー造りは大きく変わりました。連続式蒸留器は、単式蒸留器に比べて大量のウイスキーを効率的に製造できる画期的な装置でした。多くの蒸留所が連続式蒸留器を採用する中、アイルランドの蒸留所は伝統的な単式蒸留器と、麦芽と麦芽化していない大麦を使う製法にこだわり続けました。時代が変わっても、変わらぬ製法でピュア・ポットスチルウイスキーは造り続けられたのです。こうして今日まで受け継がれてきたピュア・ポットスチルウイスキー。それはまさに、アイルランドのウイスキー造りの歴史を語る上で欠かせない、特別なウイスキーと言えるでしょう。