
お酒とピルビン酸の関係
お酒、特に日本酒や米から作るお酒、麦から作るお酒、葡萄酒といった醸造酒は、目に見えない小さな生き物が糖を分解することで生まれます。この小さな生き物は酵母と呼ばれ、糖を食べて生きる際に、私たちが好むお酒の素となるものと、泡の元となるものを作り出します。このお酒の素となるものはエチルアルコール、泡の元となるものは二酸化炭素です。酵母が糖を食べて、エチルアルコールと二酸化炭素を作り出す働きを、アルコール発酵と呼びます。私たちが普段口にするお酒はこのエチルアルコールによるものです。では、糖からどのようにしてエチルアルコールが生まれるのでしょうか。糖の中でも、特にブドウ糖は、酵母の好物です。酵母はブドウ糖を自分の栄養にして、生きるためのエネルギーを得ています。この時、ブドウ糖は一度にエチルアルコールへと変化するのではなく、いくつかの段階を経て、姿を変えていきます。まるで芋虫がさなぎを経て蝶へと変わるように、ブドウ糖もいくつかの段階を経て、最終的にエチルアルコールへと変化するのです。この変化の過程で、特に重要な役割を担うのがピルビン酸と呼ばれる物質です。ピルビン酸は、ブドウ糖が変化する過程の中間地点に位置する物質であり、エチルアルコールが生まれる直前の姿と言えるでしょう。ブドウ糖はまず、複雑な工程を経てピルビン酸へと変化します。そして、このピルビン酸がさらに変化することで、私たちが楽しめるお酒の素であるエチルアルコールが生まれるのです。お酒の種類によって、使われる材料や造り方は異なりますが、酵母が糖を分解し、エチルアルコールを作り出すという基本的な原理は変わりません。小さな生き物の働きによって、様々な種類のお酒が生まれていると思うと、なんだか不思議な気持ちになりますね。