ペルー

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スピリッツ

ペルーの魂、ピスコの魅力

南米の国、ペルーを代表するお酒、ピスコについてお話しましょう。ピスコは、ペルーの海岸線に広がる地域で、太陽の恵みをたっぷり浴びて育ったマスカット系の白ぶどうから作られる蒸留酒です。その製造過程は、まさに職人技の結晶と言えるでしょう。まず、収穫された白ぶどうの中から、傷のない粒だけを厳選して集めます。そして、それらを丁寧に潰し、自然に発酵させます。この発酵の工程こそ、ピスコの風味の基礎を築く大切な段階です。発酵によって生まれたお酒は、その後、単式蒸留器に移されます。ここで、じっくりと時間をかけて蒸留することで、ぶどう本来の繊細な香りや風味が凝縮されていきます。単式蒸留器を使うことで、雑味が取り除かれ、より純粋なぶどうの味わいを引き出すことができるのです。こうして完成したピスコは、無色透明で、一見すると水のように見えます。しかし、口に含むと、華やかなぶどうの香りが広がり、その後に続くしっかりとしたアルコールの刺激が、心地よい余韻を残します。アルコール度数は40度から45度ほどで、比較的高いですが、その強い個性こそがピスコの魅力と言えるでしょう。ペルーでは、もっともよく知られたお酒として、お祝いの席や日常の晩酌にと、幅広い場面で楽しまれています。また、近年では世界中でその名が知られるようになり、多くの人々に愛飲されています。ペルーの豊かな風土と文化を凝縮したようなピスコは、まさにペルーの魂と言えるでしょう。
ビール

古代の恵み、チチャを紐解く

チチャは、中南米で古くから親しまれてきた伝統的なお酒です。その歴史は古代文明にまで遡り、インカ帝国の時代には既に宗教儀式や祝いの席などで振る舞われていました。人々の暮らしに深く根ざしたお酒として、大切にされてきたのです。チチャの原料は主にトウモロコシです。トウモロコシを煮て、それを噛み砕き、壺に入れて発酵させることで作られます。 「口噛み酒」と呼ばれるこの独特な製法は、唾液に含まれる酵素を利用して、トウモロコシのでんぷんを糖に変えるという、古代の人々の知恵が生み出したものです。噛み砕かれたトウモロコシは壺に入れられ、じっくりと時間をかけて発酵することで、独特の風味を持つお酒へと変化していきます。この製法は、まさに古代の人々の知恵と工夫の賜物と言えるでしょう。口噛みという製法は、現代の衛生観念から見ると驚くべきものかもしれません。しかし、そこには自然の力を最大限に活用しようとした先人たちの知恵が詰まっているのです。かつては、この製法こそがチチャを作る唯一の方法でした。人々は、口噛みによって生まれる独特の風味を愛し、大切に受け継いできたのです。現在では、衛生面や効率の観点から、口噛み製法はほとんど行われていません。麦芽などを用いて糖化を行う製法が主流となっています。しかし、今でも一部の地域では、伝統的な口噛み製法を守り続ける人々がいます。彼らは、先祖代々受け継がれてきた製法を大切に守り、独特の風味を持つチチャを造り続けているのです。チチャは、単なるお酒ではなく、中南米の人々の歴史と文化を象徴する存在と言えるでしょう。古代から現代まで、人々の暮らしと共に歩んできたチチャは、これからも中南米の地で愛され続けることでしょう。