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ジンの香り、杜松の実の秘密

杜松の実は、ヒノキ科の針葉樹である杜松の木になる小さな実です。常緑樹である杜松は、北半球の寒い地域を中心に、世界中で広く生育しています。その実は、はじめは緑色をしていますが、1~3年かけて熟すと、濃い藍色へと変化します。この熟した実こそが、独特の風味をもち、様々な用途に利用されているのです。杜松の実は、その複雑で奥深い香りが特徴です。深い森を思わせるような、松やヒノキに似たすがすがしい木の香りを基調として、そこに柑橘類を思わせる爽やかさと、かすかなスパイスの香りが複雑に絡み合っています。この香りは、ジンの主要な香りの成分であり、「ジン」というお酒を特徴づける重要な要素となっています。実際に口にすると、最初はほのかな甘みが広がります。その後、徐々にほろ苦さと、かすかな辛みが感じられるようになります。この複雑な味わいが、他のスパイスやハーブ、果物などと調和し、様々な料理や飲み物に奥行きを与えます。世界には多くの種類の杜松が自生していますが、お酒のジンに最もよく使われるのは、ヨーロッパ原産のセイヨウネズです。セイヨウネズは、香り、風味ともにバランスが良く、ジンの風味付けに最適とされています。特に、イタリアのトスカーナ地方で収穫されるセイヨウネズは、高品質で香り高く、世界中のジンメーカーから珍重されています。杜松の実は、ジン以外にも、肉料理の臭み消しや、ソース、マリネ液などの風味付けにも利用されます。また、その爽やかな香りは、アロマテラピーにも活用されています。