ボーメ

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日本酒

ボーメ度から日本酒の甘辛を知る

ボーメ度とは、液体の重さ、つまり比重を測るための物差しのようなものです。これは、フランスの科学者であるアントワーヌ・ボーメさんが考え出した方法で、今では世界中で使われています。ボーメ度を測るには、比重計と呼ばれる特別な道具を使います。この道具は、液体に入れると浮くようになっていますが、液体の重さによって沈み具合が変わります。砂糖がたくさん溶けている甘い液体は重いため、比重計はあまり沈みません。逆に、お酒のように軽い液体は比重計が深くまで沈みます。この沈み具合を目盛りで読み取ることで、液体の重さを知ることができるのです。これがボーメ度です。ボーメ度は、お酒作りで特に重要な役割を果たします。例えば、ワインや日本酒などの醸造酒を作る際には、発酵の過程で砂糖がアルコールに変わっていきます。この時、液体の重さは刻一刻と変化していきます。そこで、比重計を使ってボーメ度を測ることで、発酵の状態を正確に把握することができるのです。ボーメ度の目盛りには、実は二種類あります。一つは重ボーメ度と呼ばれ、砂糖水のように水より重い液体を測る時に使います。もう一つは軽ボーメ度と呼ばれ、アルコールのように水より軽い液体を測る時に使います。用途によって使い分けることで、より正確な比重を測ることができるのです。醸造家たちは、長年の経験と勘に加えて、このボーメ度を参考にすることで、おいしいお酒を安定して造り続けているのです。また、ボーメ度は、食品業界や化学工業など、様々な分野でも液体の比重を測る尺度として利用されています。
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冷込み:日本酒造りの難関

お酒造りの最初の頃、蒸した米、麹、水などを混ぜ合わせたものを醪(もろみ)と言いますが、この醪の中で起こる『冷込み』とは、醪の温度が低すぎるために起こる現象のことです。 お酒造りは、蒸したお米に麹を加え、麹に含まれる酵素の力で米のデンプンを糖に変えることから始まります。この糖を、次に酵母が食べてアルコールと炭酸ガスを作り出すことでお酒が出来上がります。冷込みは、この糖を作る工程と、酵母がアルコールを作る工程のバランスが崩れた時に起こります。 醪の温度が低いと、麹は元気に働いてどんどん糖を作りますが、酵母の方は寒くてあまり活動できません。そのため、糖は作られるのに消費されず醪の中にどんどん溜まっていき、甘くなってしまいます。この甘さを測る道具にボーメ計というものがありますが、冷込みが起きるとボーメ計の数値が高くなります。酵母が十分に活動できないとアルコールが作られないため、お酒の出来が悪くなってしまいます。ひどい場合には、酵母が全く働かなくなり、お酒造りが途中で止まってしまうこともあります。これはお酒造りにおいて大きな問題で、品質が落ちてしまうだけでなく、出来上がるお酒の量も減ってしまいます。そのため、お酒を造る職人たちは、醪の温度を常に適切に保つように細心の注意を払っています。 室温を調整したり、時には温めたお湯を少し加えたりと、様々な工夫を凝らしながら、酵母が快適に働ける環境を作り、美味しいお酒を造るために日々努力を重ねているのです。
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酒造りの水:強い水の秘密

お酒は、米と麹と水から生まれます。この三つの要素が複雑に絡み合い、銘柄ごとの個性豊かな味わいを生み出します。中でも水は、お酒の質を決める重要な要素と言えるでしょう。お酒造りに適した良質な水は、発酵の段階で働く酵母に良い影響を与え、酒母や醪(もろみ)の出来を大きく左右します。そして、最終的に出来上がるお酒の風味や香りを決定づけるのです。今回は、酒造りで「強い水」と呼ばれる水についてお話しましょう。「強い水」とは、ミネラル分を多く含んだ硬水のことを指します。カルシウムやマグネシウムといったミネラルは、酵母の働きを活発にし、力強い発酵を促します。これにより、醪の酸度が上がりやすくなり、雑菌の繁殖を抑える効果も期待できます。結果として、すっきりとした飲み口で、コクのある味わいのお酒が生まれます。また、長期熟成にも適しており、時間をかけてじっくりと味わいを深めていくお酒にも向いていると言えます。一方で、ミネラル分の少ない「軟水」は、穏やかな発酵を促し、繊細で香り高いお酒を生み出します。例えば、吟醸香と呼ばれるフルーティーな香りは、軟水によって醸し出されることが多いです。このように、水の硬度によって、お酒の味わいは大きく変化します。仕込み水の違いが、お酒の多様性を生み出す一つの要因と言えるでしょう。それぞれの酒蔵が、その土地の水質を見極め、最適な酒造りを追求することで、個性豊かなお酒が生まれているのです。水は単なる溶媒ではなく、お酒の個性を形作る重要な要素です。次に日本酒を味わう際には、使われている水のことも少しだけ意識してみると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。