モロミ

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日本酒

奥深い味わいの赤酒:その製法と魅力

赤酒とは、熊本地方を代表する独特のお酒です。その名の通り、赤みを帯びた褐色が特徴で、一見すると濃い紅茶のようにも見えます。原料は清酒と同じく米を使い、麹と水を加えて発酵させて造られますが、製法に大きな違いがあります。まず、お米を蒸して麹と水を加え、タンクの中で発酵させます。この工程は清酒造りと同じですが、赤酒ならではの特徴は、発酵の最終段階で「灰汁(あく)」と呼ばれるものを加えることです。この灰汁は、木を燃やしてできた灰を水に浸し、その上澄み液を集めたものです。灰汁にはアルカリ性の成分が含まれており、これを入れることで発酵が止まり、同時に酒の色が赤褐色に変化します。まるで魔法のように色が変わる様子は、古くから人々を魅了してきたことでしょう。灰汁には、酒の保存性を高める効果もあります。アルカリ性の環境は、雑菌の繁殖を抑える働きがあるため、赤酒は常温でも比較的長持ちします。かつて冷蔵庫のない時代には、この保存性の高さは非常に貴重なものだったと考えられます。こうして出来上がった赤酒は、甘味、酸味、うま味、渋味、そしてかすかな苦味が複雑に絡み合い、奥深い味わいを醸し出します。例えるなら、熟した果実のような濃厚な甘みと、それを引き締める心地よい酸味、そして後味に感じるほろ苦さが絶妙なバランスで調和しています。この独特の風味は料理にもよく合います。煮物に使うと、素材の旨味を引き出し、コクと深みを与えます。また、照り焼きのタレに使うと、つややかな照りとともに、まろやかな甘みと風味をプラスしてくれます。その他、肉や魚の臭みを消す効果もあるため、下味にも活用できます。まさに、熊本の食文化を支える名脇役と言えるでしょう。
日本酒

搾りたての風味!生貯蔵酒の魅力

生貯蔵酒とは、日本酒独特の風味と製法を持つお酒です。その名の通り「生」と「貯蔵」という二つの要素が巧みに組み合わされています。日本酒造りでは、醪(もろみ)という発酵した液体からお酒を搾り取りますが、この搾りたてのフレッシュな状態こそが「生」と呼ばれる所以です。日本酒は通常、品質を安定させ、長期保存を可能にするため二度の加熱処理(火入れ)を行います。しかし、生貯蔵酒は、出荷の直前まで低温でじっくりと貯蔵し、出荷前に一度だけ火入れを行うという点が大きく異なります。この一度だけの火入れという製造方法が生貯蔵酒の最大の特徴を生み出しています。搾りたてのフレッシュな風味と香りを損なうことなく、品質の劣化を防ぎ、程よい熟成感も楽しめるという、絶妙なバランスを実現しているのです。低温貯蔵によって、荒々しい角が取れ、まろやかで落ち着いた味わいに変化していきます。フレッシュな果実のような香りはそのままに、旨味が増し、飲み飽きしない奥深い味わいを生み出します。また、火入れを一度だけにすることで、加熱による香りの変化が最小限に抑えられます。そのため、醪由来の繊細な香りや、貯蔵によって生まれた複雑な香りを存分に楽しむことができます。まさに、生の持つ華やかさと、貯蔵によって生まれる円熟味の両方を兼ね備えた、日本酒の魅力を味わえるお酒と言えるでしょう。生貯蔵酒は、冷酒で楽しむのがおすすめです。よく冷やすことで、フレッシュな香りが一層引き立ち、キリッとした飲み口が楽しめます。様々な酒蔵が生貯蔵酒を造っており、それぞれに個性があります。ぜひ、お気に入りの一本を見つけて、日本酒の奥深さを楽しんでみてください。
ウィスキー

お酒造りの基本、発酵の神秘

発酵とは、微生物の働きによって食べ物が変化する様を指します。目には見えない小さな生き物が、糖やでんぷんなどの栄養を食べて、別の物質を作り出すことで、元の食べ物とは全く異なる風味や性質を持つものへと変化していくのです。お酒造りで特に大切なのは、アルコール発酵と呼ばれるものです。これは、お酒のもととなる甘い液体に酵母と呼ばれる微生物を加えることで起こります。酵母は糖を分解し、私たちが楽しむお酒の成分であるアルコールと、シュワシュワとした泡の正体である二酸化炭素を作り出します。発酵は、お酒だけでなく、様々な食べ物作りにも利用されています。例えば、パン作りでは、酵母が小麦粉に含まれる糖を分解し、二酸化炭素を発生させることで生地が膨らみます。また、ヨーグルトは、牛乳に乳酸菌を加えることで作られます。乳酸菌は牛乳に含まれる糖を分解し、乳酸を作り出すことで、牛乳を固まらせ、独特の酸味を生み出します。さらに、納豆は大豆を納豆菌で発酵させたもの、味噌は大豆と米麹を発酵させたもの、醤油は大豆と小麦、塩を発酵させたものと、日本の伝統的な食文化を支える多くの食品も、発酵によって作られています。昔から、人々はこの発酵という現象を、食べ物を長持ちさせたり、味を良くしたりするために利用してきました。冷蔵庫のない時代には、発酵は食べ物を保存する上で非常に重要な役割を果たしていたのです。そして現代でも、発酵食品は健康に良い食べ物として注目を集めています。発酵は、微生物の種類や温度、湿度などの環境によって、様々な物質を生み出すことができます。同じ材料を使っても、発酵のさせ方を変えることで、全く異なるものが出来上がるのです。科学が進歩した現代においても、発酵の仕組みにはまだ分からないことが多く、自然の奥深さを感じさせます。まるで微生物たちが魔法を使っているかのように、様々な食品を生み出す発酵は、まさに自然の神秘と言えるでしょう。
ウィスキー

ウイスキーの甘さの秘密:糖化の工程

お酒の原料となる麦は、そのままでは甘くありません。お菓子や飲み物に使われる砂糖のような甘みは、麦の中に隠されたデンプンから生まれます。デンプンは、麦が成長するために必要な栄養分を蓄えたものです。このデンプンを、私たちが味わえる甘みに変える工程が「糖化」です。糖化とは、デンプンを麦芽に含まれる酵素の力で、糖に変える作業のことです。まず、麦を発芽させます。すると、麦の中に眠っていた酵素が目を覚まします。この酵素は、デンプンを分解して糖に変える力を持っています。発芽した麦を乾燥させたものが「麦芽」です。この麦芽を粉砕し、温水と混ぜ合わせます。すると、麦芽の中の酵素が活発に働き始め、デンプンをブドウ糖などの糖に変えていきます。この工程こそが糖化であり、麦の甘みを引き出す大切な作業です。糖化によって麦汁は、ほんのりとした甘みを帯びます。この麦汁こそが、後の発酵の工程で酵母によってアルコールへと変化していくのです。糖化の進み具合によって、最終的に出来上がるお酒の味わいは大きく変わります。糖化が不十分だと、お酒の甘みが足りなくなったり、香りが薄くなったりすることがあります。反対に、糖化が進みすぎると、雑味が出てしまうこともあります。そのため、糖化の工程は、お酒造りの職人が長年の経験と技術を駆使して、慎重に進める必要があるのです。麦の甘みを引き出し、美味しいお酒へと繋げるために、糖化は欠かせない工程と言えるでしょう。