
アメリカンウイスキーの世界
アメリカンウイスキーの物語は、18世紀に新天地アメリカへと海を渡ったスコットランドやアイルランドからの移民たちの歴史と切っても切り離せない関係にあります。彼らは故郷でのウイスキーの記憶を胸に、アメリカでもウイスキー造りを始めました。彼らは慣れ親しんだスコッチやアイリッシュウイスキーと同じ製法でウイスキーを造ろうとしましたが、新大陸アメリカは彼らに様々な試練を与えると同時に、大きな可能性をもたらしました。故郷とは異なる気候風土、そして使える原料の違い。特に原料は大きな変化をもたらしました。スコットランドやアイルランドでは、ウイスキーの原料は大麦が主流でしたが、アメリカでは大麦麦芽が簡単には手に入りませんでした。そこで、アメリカ大陸で豊富に収穫できるトウモロコシやライ麦、小麦などを原料として使うようになりました。トウモロコシを使うことで、ウイスキーはより甘く、まろやかな風味を持つようになりました。ライ麦はスパイシーな風味を、小麦は軽やかでスムースな味わいをウイスキーにもたらしました。こうして、様々な穀物を原料に、様々な配合を試すことで、アメリカ独自のウイスキーが誕生していったのです。バーボンやライ・ウイスキー、テネシー・ウイスキーなど、個性豊かな様々な種類のウイスキーが、アメリカ各地で造られるようになりました。蒸留方法や熟成方法にも工夫が凝らされ、アメリカンウイスキーは独自の進化を遂げていきます。アメリカという新天地で、移民たちのフロンティア精神と、新大陸の豊かな自然環境が出会い、アメリカンウイスキーは独自の文化を築き上げていったのです。アメリカンウイスキーの歴史は、まさにアメリカの歴史そのものと言えるでしょう。