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日本酒

お酒造りの縁の下の力持ち:酵素

生き物の体の中では、様々な化学反応が常に行われています。食べ物を消化してエネルギーに変えたり、新しい細胞を作ったり、呼吸をしたり。これら全てが化学反応によるものです。そして、これらの反応をスムーズに進めるために欠かせないのが「酵素」です。酵素は、いわば化学反応の助っ人。自身は変化することなく、他の物質の反応速度を速めます。例えば、山の頂上まで荷物を運ぶことを想像してみてください。一人で運ぶのは大変ですが、滑車を使えば少ない力で楽に運ぶことができます。酵素はこの滑車のような役割を果たし、化学反応が進むための必要なエネルギーを下げることで、反応を速めているのです。お酒造りにおいても、酵素は重要な役割を担っています。お酒の原料であるお米には、デンプンが多く含まれています。このデンプンを、私たちが消化できる糖に変えるのも酵素の働きです。麹菌や酵母といった微生物は、様々な酵素を作り出します。麹菌が作る酵素は、お米のデンプンをブドウ糖などの糖に変えます。そして、酵母が作る酵素は、この糖をアルコールと炭酸ガスに変えるのです。このように、異なる種類の酵素がそれぞれの役割を果たすことで、お酒が出来上がります。それぞれの酵素は、特定の物質にしか作用しません。鍵と鍵穴の関係のように、特定の物質とだけピッタリと合うことで、その物質の反応だけを速めることができます。この酵素の特異性のおかげで、お酒造りでは様々な酵素が使い分けられています。デンプンを糖に変える酵素、タンパク質を分解する酵素、その他にもお酒の風味や香りを良くする酵素など、多種多様な酵素が複雑なお酒造りの過程を支えているのです。まさに、酵素なくしてお酒は造れないと言えるでしょう。このように、酵素は生き物の体の中でも、お酒造りにおいても、なくてはならない存在です。酵素の働きを理解することは、お酒造りの奥深さを知る上で非常に大切です。どんな酵素がどんな働きをしているのかを知ることで、お酒の味わいや香りがどのようにして生まれるのか、より深く理解することができるでしょう。