ロンドン・ジン

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スピリッツ

懐かしの甘露、オールド・トム・ジン

蒸留酒であるジンの中でも、歴史に深く根差した「オールド・トム・ジン」は、十八世紀のイギリスで誕生しました。当時、庶民の間でジンは爆発的な人気を誇っていましたが、その製造方法はまだ未熟で、洗練されていない強い風味と雑味があり、そのままではなかなか口に運びにくいものでした。そこで、人々は飲みやすくするために様々な工夫を凝らしました。砂糖を加えることで、ジンの荒々しい風味を和らげ、より親しみやすい味わいへと変化させたのです。これが「オールド・トム・ジン」の始まりとされています。その独特な名前の由来には、いくつかの説があります。中でも有名なのは、居酒屋の看板に黒猫の絵が描かれていたというものです。「オールド・トム」とは、老いた雄猫のこと。黒猫の看板が目印の居酒屋で、人々はジンを傾け、その独特な甘みのあるジンは「オールド・トム」と呼ばれるようになりました。また、猫の形をした蛇口からジンを注いでいたという話も残っています。これらの逸話から、「オールド・トム・ジン」が庶民の生活に深く溶け込み、広く愛飲されていたことが分かります。「オールド・トム・ジン」の歴史は、常に順風満帆だったわけではありません。禁酒法時代には、密造酒としてひそかに造られ、人々に愛飲され続けました。このように波乱万丈の歴史をくぐり抜けながらも、その製法と味わいは現代まで脈々と受け継がれています。現代においては、カクテルの材料として、その独特な甘みと風味が高く評価されています。古き良き時代を思い起こさせる「オールド・トム・ジン」は、歴史の重みとロマンを感じさせるお酒と言えるでしょう。
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ロンドン・ジンの魅力:洗練されたキレのある味わい

お酒の歴史を語る上で、ジンは欠かせないものの一つです。その発祥は、十七世紀後半のイギリスに遡ります。当時、オランダからイギリスへと渡ってきたウィリアム三世が国王に即位しました。これがジンの歴史を大きく変える転換点となりました。ウィリアム三世は自国のお酒であるジンを深く愛し、イギリス国内での製造と消費を奨励しました。この政策により、ロンドンはジン製造の一大拠点へと発展を遂げました。街の至る所にジン製造所が立ち並び、その数たるや莫大なものでした。ロンドンで製造されるジンは「ロンドン・ジン」と呼ばれ、その名は瞬く間に広まり、定着していきました。当時のイギリスでは、ジンは庶民にとって手軽に楽しめるお酒として広く親しまれていました。人々は仕事の後や集まりで、ジンを酌み交わし、日々の疲れを癒していました。ジンの需要は爆発的に増加し、製造所はフル稼働でジンを製造していました。しかし、初期のジンは今とは異なり、必ずしも洗練された味わいとは言えませんでした。時代が進むにつれて、人々の味覚も洗練されていきました。より香り高く、よりまろやかなジンが求められるようになり、製造技術も進化していきました。蒸留方法や使用する原料、そしてそれらの組み合わせなど、製造者たちは試行錯誤を繰り返し、より高品質なジンを生み出すために尽力しました。そしてついに、現代に通じる洗練された味わいのロンドン・ジンが誕生したのです。それは、長い歳月と人々の情熱が生み出した結晶と言えるでしょう。