亀の尾

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日本酒

幻の酒米、亀の尾の魅力を探る

「亀の尾」は、日本酒を造るのに最適な米として知られています。その名の由来は、稲穂の形が亀の尻尾に似ていることにあります。この米は、かつて東日本の田んぼで広く育てられており、人々の食卓に並ぶご飯として親しまれていました。しかし、育てるのが難しく、収穫量が毎年安定しないという欠点がありました。そのため、次第に田んぼから姿を消し、「幻の米」と呼ばれるまでになってしまったのです。ところが近年、日本酒造りに非常に適した性質を持っていることが改めて見直され、再び脚光を浴びるようになりました。特に、漫画『夏子の酒』でこの米が取り上げられたことが大きなきっかけとなり、再び多くの酒蔵で栽培されるようになりました。「復活米」の代表例として、今や全国各地でその独特の風味を持つお酒が楽しめるようになっています。亀の尾で造られた日本酒は、ふくよかな香りとなめらかな口当たりが特徴です。他の米と比べて、タンパク質が少なく、溶けやすいでんぷん質を多く含んでいるため、きめ細やかで上品な味わいの酒を生み出します。また、低温でじっくりと発酵させることで、その米本来の旨味を最大限に引き出すことができます。亀の尾を使った日本酒は、その希少性から「幻の酒」と呼ばれることもあり、日本酒愛好家にとっては垂涎の的となっています。さまざまな酒蔵が、それぞれの技で醸し出す亀の尾の酒は、香り、味わい、共に多様性に富んでおり、飲み比べを楽しむのも一興です。かつて食卓を彩っていた米が、時を経て、日本酒という新たな形で再び私たちの心を豊かにしてくれていると言えるでしょう。