
複雑な風味を持つ熟成ビール:グーズ
ベルギーの首都ブリュッセル近郊で古くから作られてきたグーズ。その独特の味わいの秘密は、ランビックと呼ばれるビールにあります。ランビックは、一般的なビール酵母を添加するのではなく、空気中に漂う野生酵母を取り込むことで発酵が進む、まさに自然の恵みによって生まれるビールです。その製法は、まず大麦、小麦、そして熟成させたホップを用いて麦汁を仕込みます。この麦汁を屋根裏などの開放的な空間に置き、自然と舞ってくる酵母を待ち受けます。こうしてランビック独特の複雑な酸味と香りが生まれます。グーズは、このランビックの中でも異なる熟成期間のものを混ぜ合わせて作られます。2~3年もの間、じっくりと樽の中で熟成させたランビックと、まだ1年程度の若いランビックを絶妙なバランスでブレンドすることで、奥深い風味と芳醇な香りが生まれます。このブレンドは、まるで熟練の職人が絵の具を混ぜ合わせるように、長い経験と知識に基づいて行われます。若いランビックに残る糖分は、瓶詰めされた後も二次発酵を進めます。この二次発酵により炭酸ガスが発生し、シャンパンのような発泡性を与えます。そのため、グーズは瓶内二次発酵による圧力に耐えられるよう、厚みのあるシャンパンボトルに詰められ、コルクで栓がされます。開栓時には、シャンパンと同様にポンッと心地よい音が響き渡り、祝いの席に華を添えます。こうして、自然の力と職人の技が融合した、唯一無二のビール、グーズが完成するのです。