
酒造りの核心、仲添えを紐解く
日本酒は、米と米麹と水という簡素な材料から、驚くほど複雑で深い味わいを持つ飲み物へと変化を遂げる、日本の伝統的なお酒です。その製造方法は、いくつもの工程を経て、長い時間と手間をかけてじっくりと進められます。その中でも特に重要な工程の一つが「三段仕込み」です。これは、お酒のもととなる酵母を育てるための液である「酒母」に、蒸した米と米麹と水を三回に分けて加えていく、日本酒ならではの独特な製法です。三回の仕込みは、それぞれ役割が異なり、最終的なお酒の味わいを大きく左右します。この三段仕込みの中で、二回目の仕込みを「仲添え」と呼びます。最初の仕込みである「添え」の後、数日かけて酵母をじっくりと増やし、活発な状態になったところで、仲添えを行います。仲添えでは、添えとほぼ同じ量の蒸米と米麹と水を加えます。この仲添えによって、さらに多くの糖が生成され、酵母の活動がより活発になります。同時に、お酒の雑味のもととなる成分を抑え、風味のバランスを整える役割も担います。仲添えは、お酒の味わいを決定づける重要な工程であり、杜氏の経験と勘が試されます。蒸米と米麹と水の量や温度、加えるタイミングなどを緻密に調整することで、目指すお酒の味わいに近づけていきます。まさに、杜氏の技と経験が凝縮された工程と言えるでしょう。三段仕込みの最後である三回目の仕込みは、「留添え」と呼ばれ、仲添えの後、再び数日置いてから行います。留添えでは、仲添えよりも多くの蒸米と米麹と水を加え、発酵をさらに進めます。そして、この三段仕込みを経て、じっくりと発酵が進んだものが、絞って日本酒となります。それぞれの工程における杜氏の丁寧な作業と、微生物の働きによって、米と米麹と水というシンプルな材料から、奥深い味わいの日本酒が生まれるのです。