
ノンチルフィルタードの魅力
お酒造りの最終段階で、冷却濾過という工程があります。これは、完成間近のお酒を低い温度に冷やし、特殊な濾過装置に通す作業のことです。この工程の目的は、お酒の中に溶け込んでいるごく微量の油分や香り成分などを取り除くことです。お酒を低い温度にさらすと、普段は液体に溶け込んでいるこれらの成分が溶けきれなくなり、細かい粒となって現れ、お酒が白く濁ったり、沈殿物が底に溜まったりすることがあります。お酒の世界では、この現象を「オリ」と呼びます。冷却濾過を行うことで、この「オリ」の発生を抑え、透き通った美しい見た目のお酒に仕上げることができます。現在、市場に出回っている多くのお酒、特にウイスキーはこの冷却濾過を経て、消費者の手に届いています。冷却濾過には、見た目以外にもメリットがあります。例えば、お酒を長期間保存する際に、オリが原因で風味が変化することを防ぎます。また、お酒を冷やして飲む際に、オリが析出して濁ってしまうのを防ぎ、いつでもクリアな状態でお酒を楽しむことができます。しかし、近年「冷却濾過をしていないお酒」への関心が高まっています。冷却濾過をしない製法は「ノンチルフィルタード」と呼ばれ、あえてオリを取り除かず、お酒本来の風味や濃厚さを追求する製法として注目を集めています。ノンチルフィルタードのお酒は、温度変化によってオリが発生する可能性があるため、保存方法に注意が必要ですが、より複雑で豊かな味わいを楽しむことができるとされています。冷却濾過の有無によって、お酒の見た目や味わいが微妙に変化するため、飲み比べてみるのも面白いかもしれません。