化学反応式

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お酢ができるまで:酢酸発酵のひみつ

お酒が空気に触れて酸っぱくなる現象、それを酢酸発酵と言います。誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。例えば、飲み残したお酒を放置しておくと、酸っぱい匂いがして飲めたものではなくなります。これは、お酒に含まれるアルコールが、空気中の酢酸菌の働きによって酢酸に変化したためです。酢酸菌は、空気中によく存在する微生物の一種です。この小さな生き物が、アルコールを分解してエネルギーを得る過程で、酢酸を作り出します。酢酸は、お酢の主成分です。ツンと鼻を刺激する香りと、酸っぱい味が特徴です。つまり、酢酸発酵とは、アルコールがお酢に変化する現象のことを指します。少し詳しく説明すると、酢酸菌はアルコールを酸化させてアセトアルデヒドという物質に変化させ、さらにアセトアルデヒドを酸化させて酢酸を作り出します。この一連の化学反応には、酸素が不可欠です。そのため、お酒を密閉容器に入れて空気を遮断しておくと、酢酸発酵は起こりません。逆に、空気に触れさせておくと、酢酸菌が活動し始め、お酒は徐々に酢酸に変化していきます。酢酸発酵は、微生物の働きによって食品の性質を変化させる発酵現象の一種です。お酒の風味はそのままに、酢酸菌の働きによって酸味と独特の香りが加わり、全く異なる調味料であるお酢へと変化します。これは、まるで微生物の魔法のようです。家庭で意図せず起こることもありますが、食酢の製造過程では、この酢酸発酵を人為的に制御し、良質のお酢を製造しています。お酒の種類によって、できあがるお酢の味や香りが異なるのも、奥深いところです。