南米

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ビール

古代の恵み、チチャを紐解く

チチャは、中南米で古くから親しまれてきた伝統的なお酒です。その歴史は古代文明にまで遡り、インカ帝国の時代には既に宗教儀式や祝いの席などで振る舞われていました。人々の暮らしに深く根ざしたお酒として、大切にされてきたのです。チチャの原料は主にトウモロコシです。トウモロコシを煮て、それを噛み砕き、壺に入れて発酵させることで作られます。 「口噛み酒」と呼ばれるこの独特な製法は、唾液に含まれる酵素を利用して、トウモロコシのでんぷんを糖に変えるという、古代の人々の知恵が生み出したものです。噛み砕かれたトウモロコシは壺に入れられ、じっくりと時間をかけて発酵することで、独特の風味を持つお酒へと変化していきます。この製法は、まさに古代の人々の知恵と工夫の賜物と言えるでしょう。口噛みという製法は、現代の衛生観念から見ると驚くべきものかもしれません。しかし、そこには自然の力を最大限に活用しようとした先人たちの知恵が詰まっているのです。かつては、この製法こそがチチャを作る唯一の方法でした。人々は、口噛みによって生まれる独特の風味を愛し、大切に受け継いできたのです。現在では、衛生面や効率の観点から、口噛み製法はほとんど行われていません。麦芽などを用いて糖化を行う製法が主流となっています。しかし、今でも一部の地域では、伝統的な口噛み製法を守り続ける人々がいます。彼らは、先祖代々受け継がれてきた製法を大切に守り、独特の風味を持つチチャを造り続けているのです。チチャは、単なるお酒ではなく、中南米の人々の歴史と文化を象徴する存在と言えるでしょう。古代から現代まで、人々の暮らしと共に歩んできたチチャは、これからも中南米の地で愛され続けることでしょう。
スピリッツ

アグアルディエンテ:南米の蒸留酒

お酒の世界は大きく分けて、材料を発酵させて作る醸造酒と、醸造酒をさらに蒸留して作る蒸留酒の二つに分けられます。蒸留とは、液体を熱して気化させ、それを再び冷やして液体に戻す操作のことです。この過程で、アルコールのような沸点の低い成分が先に気化するため、集めた液体にはアルコールが多く含まれるようになります。つまり、蒸留によってお酒の度数を高めることができるのです。蒸留酒という言葉は広く、様々な種類のお酒を含みます。例えば、穀物を原料として作られるお酒には、米から作る焼酎や、麦から作るウィスキーなどがあります。これらは、原料となる穀物をまず糖化させ、酵母によってアルコール発酵させた後、蒸留することで作られます。それぞれの穀物によって独特の風味や香りが生まれるため、世界中で様々な種類が楽しまれています。果物を原料とする蒸留酒も数多く存在します。代表的なものとして、ブドウから作るブランデーや、リンゴから作るカルヴァドスなどが挙げられます。これらも、果実を発酵させてから蒸留することで作られます。果実の種類によって、甘みや酸味、香りなどが異なり、それぞれに個性豊かな味わいが楽しめます。スペイン語で「燃える水」という意味を持つアグアルディエンテも、蒸留酒の一種です。アグアルディエンテは、ラテンアメリカ諸国で作られており、地域によって原料や製法が異なります。サトウキビを原料とするものや、ブドウを原料とするものなど、様々な種類のアグアルディエンテが存在します。そのため、香りや味わいも様々で、その土地ならではの風土を反映したお酒として親しまれています。このように、蒸留酒は世界中で愛されているお酒であり、その種類は実に多様です。原料や製法によって、実に様々な風味や香りが生まれるため、奥深い世界が広がっています。