山廃造り

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日本酒

奥深い旨味:醇酒の世界

日本酒は、その香りと味わいの特徴によって大きく四つの種類に分類されます。それぞれの持ち味を理解することで、自分に合ったお酒を選びやすくなります。まず、華やかな香りを特徴とするのが「薫酒」です。果物や花を思わせるフルーティーな香りが口いっぱいに広がり、若い世代を中心に人気を集めています。吟醸酒や大吟醸酒など、精米歩合の高いお酒がこれにあたり、華やかな席にもよく合います。次に、軽快な飲み口で人気なのが「爽酒」です。香りは控えめで、すっきりとした味わいが特徴です。食中酒として楽しむのにぴったりで、料理の味を邪魔することなく、むしろ引き立ててくれます。本醸造酒など、普段飲みのお酒として親しまれています。三つ目に、熟成によって独特の風味を醸し出すのが「熟酒」です。長い時間をかけて熟成させることで、カラメルや干し草を思わせる複雑な香りと、まろやかな味わいが生まれます。古酒や長期熟成酒など、じっくりと時間をかけて味わいたいお酒です。最後にご紹介するのは「醇酒」です。米の旨味を最大限に引き出した、奥深い味わいが特徴です。濃厚な味わいと、飲み応えのあるしっかりとしたボディが、日本酒好きを虜にします。純米酒や山廃仕込みのお酒が代表的で、燗にすることでさらに旨味が引き立ちます。このように、日本酒には様々な種類があり、それぞれに異なる魅力があります。自分の好みや、その日の気分、料理との組み合わせなどを考えて、色々な日本酒を楽しんでみてください。
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日本酒を醸す技:山廃造りとは

日本の伝統的なお酒造りは、お米、水、麹、酵母といった自然の恵みを、人の手によって複雑な工程を経て、奥深い味わいに変化させる技です。その中でも、山廃造りは、古くから伝わる生酛造りをより進化させた、画期的な技術と言えるでしょう。生酛造りは手間と時間がかかる製法でしたが、山廃造りは、その生酛造りの工程を簡略化することで、より効率的に美味しいお酒を造ることができるようになりました。時は明治時代、お酒の質を良くし、安定して造れるようにと、国が作った醸造試験所での研究から、山廃造りは生まれました。目指したのは、近代化による酒造りの効率化と品質向上です。そして現代においても、山廃造りは日本酒造りで大切な役割を担っています。山廃造りの名前の由来は、酒母を造る工程で、蒸した米と麹をすり混ぜる「山卸」という重労働を省略したことにあります。この山卸は、蒸米と麹を櫂棒で何度もすり潰す、体力と時間を要する大変な作業でした。山卸を省略することで、お酒造りの期間を短くし、働く人の負担を軽くすることに成功したのです。これはお酒造りの近代化に大きく貢献し、多くの酒蔵で取り入れられるようになりました。山廃造りによって、力強い味わいと複雑な香りが生まれると言われています。これは、山卸を省略したことで、乳酸菌が自然に増え、独特の酸味とコクを生み出すためです。こうして生まれた山廃酛は、しっかりとした味わいの純米酒や、芳醇な香りの吟醸酒など、様々な種類のお酒造りに活用されています。伝統を守りながらも、常に新しい技術を取り入れ、より良いお酒を造ろうとする、日本の酒造りの心意気が、山廃造りにも息づいていると言えるでしょう。