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薩摩焼の巨匠:沈壽官の軌跡

薩摩焼の中でも、ひときわ目を引く白い輝きを放つ磁器、それが「白もん」です。その名の通り、透き通るような白さが最大の特徴であり、他の薩摩焼とは一線を画す存在感を示しています。この白もんの起源は、16世紀末に遡ります。時の天下人、豊臣秀吉が朝鮮出兵を命じた際、薩摩藩主である島津義弘は、朝鮮半島から多くの陶工たちを連れ帰りました。彼らは故郷を離れ、慣れない薩摩の地で、持てる技術の粋を集め、磁器作りに励みました。その結果、生まれたのが白もんです。白もんの白い美しさは、朝鮮半島で作られていた李朝白磁の強い影響を受けています。李朝白磁の特徴である、温かみのある乳白色の肌合いと、繊細で優美な装飾技法は、白もんにも受け継がれています。特に、透かし彫りや浮き彫りといった高度な技術を用いた装飾は、白もんの美しさをより一層引き立てています。光にかざすと、その精緻な模様が浮かび上がり、まるで生きているかのような錯覚を覚えるほどです。こうして誕生した白もんは、薩摩藩の御用窯として大切に保護され、技術の伝承と発展が図られました。藩の庇護のもと、白もんはさらに洗練され、高い品質を誇る薩摩焼の代表格として、その名を広く知らしめることとなりました。薩摩藩の富と権力の象徴として、白もんは珍重され、贈答品としても用いられました。今日まで、その美しい輝きと高い芸術性は、多くの人々を魅了し続けています。