
日本酒造りにおける掛麹の役割
お酒造りにおいて、蒸した米、麹、そして水を混ぜ合わせて発酵させたものを醪(もろみ)と言います。この醪は、お酒の味わいを決める大切な要素です。醪の仕込みは、一度に全てを行うのではなく、複数回に分けて行う「三段仕込み」という方法がとられます。この三段仕込みの各段階で加える麹を、総称して掛麹と呼びます。掛麹は、お酒造りにおいて、蒸米のデンプンを糖に変える糖化を進める重要な役割を担っています。麹に含まれる酵素の働きによって、デンプンが糖に変わるこの工程は、お酒の甘みや味わいの根幹を成すものです。この糖は、後に酵母の働きでアルコールへと変わっていきます。掛麹の質や種類によって、出来上がるお酒の風味や香りが大きく左右されます。例えば、麹の種類によって、お酒は華やかな香りになったり、落ち着いた風味になったりします。また、掛麹の量によっても、お酒の甘さや濃さが調整されます。お酒造りの責任者である杜氏は、その年の米の状態や、目指すお酒の質に合わせて、掛麹の種類や量を細かく調整します。長年の経験と勘、そして深い知識に基づいて、最適な掛麹を選び、最高の醪を作り上げるのです。このように、掛麹は、お酒造りの過程で非常に重要な役割を果たしており、杜氏の技が光る部分と言えるでしょう。