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日本酒

酒造りの核心、荒櫂とは?

{日本酒は、米と米麹、そして水という、簡素な材料から驚くほど複雑で深い味わいを醸し出す、日本の伝統的なお酒です。その製造工程は、いくつもの段階を経て、丁寧に進められます。各工程に、蔵人の長年培われた技術と経験、そして酒造りに対する熱い想いが込められており、その一つ一つが日本酒の独特な風味を決定づける大切な要素となっています。今回は、数ある工程の中でも、特に重要な「荒櫂(あらがい)」について詳しく見ていきましょう。荒櫂とは、醪(もろみ)の表面に浮かぶ固まりを、櫂(かい)と呼ばれる長い棒を使ってかき混ぜる作業です。醪とは、蒸した米、米麹、水を混ぜ合わせて発酵させたもので、日本酒の味わいの基となるものです。荒櫂は、醪全体を均一な状態にするために欠かせない作業です。荒櫂を行うタイミングや櫂を入れる深さ、そしてかき混ぜる強さは、醪の状態や目指す酒質によって微妙に調整されます。例えば、発酵が活発な時期には、醪の温度上昇を抑えるため、優しく丁寧に櫂を入れます。逆に、発酵が穏やかな時期には、醪を活性化させるため、やや強めに櫂を入れます。熟練の蔵人は、醪の様子を五感で感じ取りながら、最適な方法で荒櫂を行います。荒櫂は、醪の温度管理だけでなく、酵母の活動や雑菌の繁殖を抑える上でも重要な役割を果たします。櫂を入れることで、醪全体に酸素が供給され、酵母の活動を促進します。また、醪の表面に浮かぶ固まりを崩すことで、雑菌の繁殖しやすい環境を取り除きます。このように、荒櫂は日本酒の品質を保つ上で欠かせない工程と言えるでしょう。一見単純に見える荒櫂ですが、そこには蔵人の経験と技術、そして酒造りへの情熱が凝縮されています。機械化が進む現代においても、多くの酒蔵では、この伝統的な手作業を守り続けています。それは、日本酒の奥深い味わいを生み出すためには、人の手による繊細な作業が不可欠であることを、蔵人たちが身をもって知っているからです。荒櫂は、日本酒造りの奥深さを象徴する、重要な工程と言えるでしょう。
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酒造りの櫂:種類と使い方

櫂(かい)とは、お酒造りの現場で、醪(もろみ)などを混ぜ合わせるために用いる道具です。醪とは、蒸した米と米麹、そして水を混ぜ合わせたもので、お酒のもととなるものです。この醪は発酵が進むにつれて、固形分と液体部分が混ざり合った状態になります。この醪をうまく混ぜ合わせることが、お酒造りではとても大切です。櫂を使うことで、醪全体を均一に混ぜることができ、発酵をスムーズに進めることができます。櫂には様々な種類があり、材質も木や竹などがあります。形も様々で、用途に合わせて使い分けられます。例えば、大きな桶で醪を混ぜる際には、長い柄の先に大きな板状の部分がついた櫂を使います。この板状の部分を桶の中で動かすことで、醪全体を大きくかき混ぜることができます。また、小さなタンクで醪を混ぜる際には、柄が短く、先端がヘラ状になった櫂を使うこともあります。これにより、タンクの隅々まで丁寧に混ぜることができます。櫂を使うことで、醪全体に酵母や酵素が行き渡り、均一な発酵を促すことができます。また、櫂で混ぜることで、醪の温度ムラを防ぐこともできます。醪は発酵の過程で熱を発するため、部分的に温度が高くなりすぎると、お酒の品質に悪影響が出ることがあります。櫂を使って醪全体を混ぜることで、温度を一定に保ち、安定した発酵を実現することができます。櫂はただ混ぜるだけでなく、職人の経験と技術が込められた道具でもあります。醪の状態を見極め、適切な櫂を選び、適切な混ぜ方をすることで、より質の高いお酒を生み出すことができます。櫂の使い方一つで、お酒の味わいや香りが変わることもあるため、酒造りにおいて櫂は非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。醪の状態に合わせて、櫂の種類や混ぜ方を変えることで、目指すお酒の味わいに近づけていく、まさに職人の技が光る工程と言えるでしょう。