水切り

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日本酒

酒造りの肝、水切りの妙技

酒造りにおいて、米を蒸す前の大切な作業の一つに水切りがあります。 これは、洗ってきれいになった米を水に浸した後、その水を切る作業のことです。この水切りの目的は、蒸す前の米の水分量を調整することにあります。蒸した米の水分量は、麹菌や酵母の生育、そして最終的なお酒の味に大きな影響を与えるため、非常に重要な工程です。米を水に浸す時間は、その日の気温や湿度、米の種類などによって調整されます。例えば、気温が高い日や湿度が高い日は、米は水分を吸収しやすいため、浸水時間を短くします。反対に、気温が低い日や乾燥した日は、浸水時間を長くする必要があります。また、米の種類によっても吸水率が異なるため、それぞれの米に最適な浸水時間が存在します。水切りが適切に行われれば、蒸した米は均一な水分量になり、麹菌が米全体にしっかりと繁殖し、良質な麹ができます。 麹は、お酒造りにおいて、米のデンプンを糖に変える役割を担う、いわばお酒の素となるものです。良い麹ができれば、後の発酵も順調に進み、香り高く風味豊かなお酒となります。反対に、水切りが不十分で蒸した米の水分量が多いと、麹菌の繁殖が悪くなり、雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。また、蒸した米の水分量が少なすぎると、麹菌が十分に繁殖できず、発酵も進みづらくなります。どちらの場合も、お酒の品質に悪影響を及ぼします。そのため、杜氏は長年の経験と勘を頼りに、その日の条件に合わせて最適な水切り時間を見極めます。 まさに、美味しいお酒造りのための、重要な作業と言えるでしょう。