
水麹:日本酒造りの重要な工程
水麹とは、日本酒造りの最初の大切な作業の一つです。酒の素となる酒母(酛)や、お酒のもとになる醪(もろみ)を作る1~2時間前に、仕込み水に麹を混ぜ合わせます。これは、いわばお酒造りの準備運動のようなものです。麹とは、蒸した米に麹菌を繁殖させたものです。麹菌は酵素を作り出し、蒸米のデンプンを糖に変える働きをします。この糖が、のちに酵母の働きでアルコールに変わるため、麹は日本酒造りに欠かせないものなのです。麹を水に溶かすことで、この酵素を活性化させ、後の工程でデンプンから糖への変化をスムーズに進める準備をします。水麹の出来具合は、その後の発酵に大きく影響し、日本酒の味わいを左右する重要な要素です。良い水麹を作るには、仕込み水の温度、麹の量、混ぜ合わせる時間などが重要です。経験豊富な杜氏たちは、長年の経験と勘を頼りに、それぞれの条件を細かく調整し、最高の状態の水麹を作り上げています。水麹の作り方にも、蔵によって様々な方法があります。仕込み水の一部に麹を溶かし、その後、残りの仕込み水と合わせる方法や、すべての仕込み水を一度に麹と混ぜ合わせる方法など、蔵ごとに独自のやり方があります。このように、それぞれの蔵が受け継いできた伝統的な技が、日本酒の多様な味わいを生み出しているのです。水麹は、一見単純な作業ですが、日本酒造りの最初の重要な一歩であり、その後の工程、ひいては最終的な日本酒の味わいに大きな影響を与える、奥深い工程なのです。