
泡消機:日本酒造りの隠れた立役者
お酒作り、特に日本酒作りにおいては、酵母が糖を分解しアルコールと炭酸ガスを作り出す「発酵」という工程が欠かせません。この発酵の過程で、醪(もろみ)や酒母(しゅぼ)といった仕込み液の中では、酵母が活発に活動し、たくさんの泡が発生します。まるで沸騰しているかのように、もくもくと湧き上がる泡は、時にタンクから溢れ出てしまうこともあります。そうなると、貴重な醪や酒母が無駄になってしまうだけでなく、空気に触れることで雑菌が入り込み、お酒の品質が損なわれる恐れがあります。このような事態を防ぐために活躍するのが「泡消機」です。泡消機は、様々な種類がありますが、その仕組みは大きく分けて機械的なものと、薬品を使うものがあります。機械的な泡消機は、タンク内の液体を攪拌(かくはん)する羽根の回転速度を調整することで泡の発生を抑えたり、泡を破裂させたりすることで泡立ちを抑えます。また、超音波を利用した泡消機もあります。一方、薬品を使うタイプの泡消機は、消泡剤と呼ばれる、泡立ちを抑える効果のある食品添加物をタンク内に添加することで泡の発生を防ぎます。泡消機は、醪や酒母の品質を保ち、安定した発酵を維持するために重要な役割を担っています。泡の発生を抑えることで、雑菌の混入を防ぎ、お酒の風味や香りを守ります。また、泡によるタンクからの溢れ出しを防ぐことで、仕込み量の減少や作業場の衛生環境の悪化を防ぎ、お酒作り全体の効率を高めることにも繋がります。つまり、泡消機は、美味しいお酒を安定して供給するために、欠かすことのできない装置と言えるでしょう。美味しいお酒を味わうことができるのは、こうした技術の支えがあってこそなのです。