
酵素と活性化エネルギーの秘密
物質が別の姿に変わることを化学反応と言いますが、この変化は、常に滑らかに進むとは限りません。まるで高い山を登るように、変化が進むためには、一定量の力が必要です。この力の壁を、活性化エネルギーと呼びます。活性化エネルギーとは、化学反応を起こすために必要な最低限のエネルギーのことです。例えば、米や芋などに含まれる澱粉が、甘みのもとである糖に変わる様子を想像してみてください。澱粉は、小さな糖がいくつも手をつないで鎖のように繋がった構造をしています。この繋がりを切るには、ある程度の力が必要です。この、繋がっている手を引き離すために必要な力が、活性化エネルギーにあたります。活性化エネルギーが高い反応は、なかなか進みづらい反応です。高い山を登るのに多くの力が必要なのと同じです。逆に活性化エネルギーが低い反応は、比較的簡単に進む反応です。低い丘を登る方が楽なのと同じように、少ない力で変化が進みます。私たちの体の中では、たくさんの化学反応がいつも起こっています。食べた物を消化したり、呼吸をしたり、体温を保ったりと、これらは全て化学反応のおかげです。しかし、これらの反応の多くは活性化エネルギーが高いため、普段の体温ではなかなか進むことができません。そこで活躍するのが、酵素と呼ばれるものです。酵素は、体の中で作られる特別な物質で、化学反応を助ける働きをします。まるで山の道案内人のように、酵素は化学反応が進むための別の道を示し、必要なエネルギーを減らしてくれます。つまり、酵素は活性化エネルギーを下げることで、反応をスムーズに進める手助けをしているのです。これにより、私たちの体は、様々な反応を効率よく行うことができるのです。