浮ひょう

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その他

器差補正:正確な計測への道

お酒造りは、まるで生き物を育てるような繊細な作業です。麹や酵母といった微生物の働きによって、原料が徐々に変化し、独特の風味や香りが生まれていきます。この過程で、職人は五感を研ぎ澄まし、経験と勘を頼りに酒造りを進めてきました。しかし、近年では、安定した品質の酒を造るために、科学的な分析に基づいた品質管理が欠かせません。その中でも特に重要なのが、様々な数値を正確に計測することです。例えば、原料の糖度は発酵の進み具合に大きく影響し、最終的なアルコール度数を左右します。また、発酵中の温度管理も重要で、適切な温度範囲を保つことで、望ましい香りを生成することができます。これらの数値を正確に把握することで、酒造りの工程を緻密に制御し、目指す味わいを安定して実現することができるのです。しかし、計測に用いる道具にも、個体差や製造過程におけるわずかな違いが存在します。例えば、糖度を測るための浮き秤は、一つ一つ微妙に形状や重さが異なる場合があります。また、長年の使用によって摩耗したり、わずかな損傷が生じたりすることもあります。これらの要因によって、表示される数値と真の値との間にずれが生じることがあります。このずれを「器差」と言います。器差を放置すると、品質管理に支障をきたす可能性があります。例えば、糖度計に器差があると、実際よりも低い糖度が表示され、発酵が想定以上に進んでしまうかもしれません。結果として、目指していたよりもアルコール度数の高い辛口の酒になってしまう可能性があります。器差の影響をなくし、正確な計測を行うために重要なのが「器差補正」です。器差補正とは、計測器の示す値を補正し、真の値に近づけるための作業です。具体的な方法としては、基準となる値が分かっている標準液を用いて計測器の値を校正したり、複数の計測器で同じものを計測し、その結果を比較することで器差を特定したりする方法があります。器差補正を行うことで、より正確な数値に基づいた酒造りが可能となり、安定した品質の酒を造ることができるのです。
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お酒造りの計測器:浮ひょう

浮き秤とは、液体の重さ比べをするための道具です。重さ比べとは、あるものの重さと、基準となるものの重さを比べた値のことです。普通は、液体の場合は、基準となるものとして4度の水を使います。浮き秤は、アルキメデスの法則に基づいて作られています。アルキメデスの法則とは、水などの液体に物を入れると、その物は、押しのけた液体の重さに等しい浮く力を受けるというものです。言い換えると、液体の重さ比べが大きいほど、浮き秤はより浮きやすく、重さ比べが小さいほど、浮き秤はより沈みます。この法則を使って、浮き秤の沈み具合から液体の重さ比べを読み取ることができます。浮き秤は、ガラスで作られた管のような形の道具で、下の部分にはおもりが入っています。このおもりによって、浮き秤はいつもまっすぐ立って液体に浮かびます。そして、管の上の部分には目盛りが刻まれており、液体の表面と目盛りの交わる所から重さ比べを読み取ることができるのです。例えば、水の重さ比べを測る場合、浮き秤は目盛り1の所に来ます。もし、測る液体が水より重い場合、浮き秤は1よりも上の目盛りに来ますし、軽い場合は1よりも下の目盛りに来ます。浮き秤には様々な種類があり、測りたい液体の重さ比べの範囲によって使い分けられます。例えば、牛乳の重さ比べを測るための牛乳用浮き秤や、お酒の重さ比べを測るための酒用浮き秤などがあります。また、目盛りの刻まれ方も様々で、重さ比べを直接読み取れるものや、ボーメ度や比重などの別の単位で目盛りが刻まれているものもあります。そのため、使用する際には、どの種類の浮き秤を使うべきか、目盛りはどのように読み取れば良いのかをしっかりと確認することが大切です。
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温度補正:正確な酒質測定のために

お酒作りや品質の良し悪しを確かめる上で、アルコールの量や日本酒度といった数字はとても大切です。これらの数字は、お酒の味や特徴を知る手がかりとなります。しかし、これらの数字を測る時、温度が大きく影響することをご存知でしょうか?温度が変わると、お酒の体積も変化してしまうため、正確な値を測るためには温度の影響を調整する必要があります。これが「温度補正」です。温度補正とは、測った温度が基準となる15度ではない時に、特別な表を使って15度での値に読み替える作業のことです。温度によって液体が膨らんだり縮んだりすることを考えて、本当の値を導き出すために必要な手順です。例えば、同じお酒でも温度が高いと体積が増え、アルコールの濃度が薄く測られてしまうことがあります。また、日本酒度も温度によって変化し、実際よりも甘口または辛口に感じられることがあります。このようなズレを無くすため、温度補正は欠かせません。温度補正は、主に公式な分析や記録に用いられます。酒蔵では、製品の品質を一定に保つため、また税金を計算するために正確なアルコール度数を知る必要があります。そのため、測定値を15度での値に補正することは非常に重要です。適切な温度補正を行うことで、お酒の品質を正しく評価でき、安定したお酒作りを続けることができます。また、消費者にとっても、表示されているアルコール度数や日本酒度が正確であることは、お酒を選ぶ上で大切な情報となります。温度補正は、お酒作りに関わる全ての人にとって、なくてはならない工程と言えるでしょう。