温度計

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その他

酒造りに欠かせぬ道具:留点温度計

お酒造りは、生き物である微生物の働きによって成り立っています。お酒造りに欠かせない麹菌や酵母といった微生物は、まるで人間のように、温度によってその活動の様子を大きく変化させます。温度が低すぎると、これらの微生物は動きが鈍くなり、じっくりと時間をかけて働くようになります。これは、発酵がゆっくりと進むことを意味し、場合によっては発酵が十分に進まない可能性も出てきます。また、お酒の風味も、低温環境では十分に引き出せないことがあります。熟成にも時間がかかり、最終的に出来上がるお酒の味わいに影響を与える可能性があります。反対に、温度が高すぎると微生物は活発になりすぎるきらいがあります。まるで人間が暑すぎると疲れてしまうように、微生物も働きすぎで疲弊し、本来の力を発揮できなくなることがあります。さらに、高温環境は、お酒造りにとって好ましくない雑菌にとっては快適な環境です。雑菌は高温で活発に繁殖し、お酒の品質を損なう原因となります。雑菌の繁殖は、お酒に好ましくない風味を与えたり、腐敗させたりする可能性があります。また、酵母が活発になりすぎると、発酵が急激に進み、これもまたお酒の風味に悪影響を与えることがあります。そのため、美味しいお酒を造るためには、それぞれの工程で適切な温度を保つことが非常に重要です。麹造りでは、麹菌がしっかりと働くように温度と湿度を細かく調整する必要があります。仕込みの段階では、酵母が順調に発酵を進める最適な温度を維持しなければなりません。貯蔵の際も、お酒が熟成していく過程で温度変化が大きくないように気を配る必要があります。このように、酒造りのすべての工程で、温度計を用いて常に温度を正確に把握し、適切な温度管理を行うことが求められます。そして、留点温度計は、酒造りの現場で正確な温度管理を行うために欠かせない道具の一つなのです。
日本酒

麹づくりと温度計:乾湿差の役割

おいしい日本酒や味噌、醤油。これらを作る上で欠かせないのが麹です。麹は、蒸した米や麦、大豆などに麹菌を繁殖させたもので、日本酒造りでは米のデンプンを糖に変え、味噌や醤油造りでは大豆のタンパク質をアミノ酸に分解するなど、それぞれの発酵過程で重要な役割を担っています。麹づくりにおいて最も大切なのは、麹菌が活発に活動できる環境を整えることです。麹菌は生き物なので、温度や湿度が適切でなければうまく育ちません。まるで小さな生き物を育てるように、注意深く見守りながら環境を整えていく必要があります。その環境を整える上で重要なのが、乾湿差という考え方です。乾湿差とは、その名の通り、乾球温度と湿球温度の差のことです。乾球温度とは、普通の温度計で測る温度のことです。一方、湿球温度とは、温度計の球部にガーゼなどを巻き、水で湿らせた状態で測る温度のことです。湿球温度は、水分が蒸発する際に熱が奪われるため、乾球温度よりも低くなります。この温度差が、空気中の水蒸気の量を表す指標となるのです。麹菌は、適度な水分と温度の中で最も活発に活動します。湿度が高すぎると、麹菌以外の雑菌も繁殖しやすくなり、麹が腐敗してしまう可能性があります。逆に、湿度が低すぎると、麹菌の活動が鈍くなり、うまく成長しません。そこで、乾湿差を測ることで、空気中の水分量を把握し、最適な湿度を保つことができるのです。麹づくりでは、温度計と湿度計を用いて、常に温度と湿度を管理します。そして、乾湿差の値を目安に、加湿や換気などの調整を行い、麹菌にとって最適な環境を維持するのです。一見難しそうに思えるかもしれませんが、仕組みを理解すれば、麹づくりの奥深さをより一層感じることができるでしょう。古来より受け継がれてきた伝統的な発酵技術である麹づくり。その中には、先人たちの知恵と工夫が凝縮されているのです。