湧突き

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日本酒

湧き上がる酒母の力:泡の秘密

お酒造りの工程で、酒母造りは土台を作るような大切な作業です。酒母とは、簡単に言うと、お酒造りに必要な酵母をたくさん増やしたものです。この酒母が、後の仕込みでタンクいっぱいに広がるお酒のもとになるのです。酒母造りは、蒸した米、米麹、水を混ぜ合わせるところから始まります。そこに少量の酵母を加え、温度管理を徹底しながら酵母を育てていきます。まるで、小さな種から大きな木を育てるように、酵母は少しずつ数を増やしていきます。この時に、タンクの中では様々な変化が起きています。例えば、「湧き突き」と呼ばれる現象があります。これは、タンクの中で酵母が増えることで炭酸ガスが発生し、その泡が表面に上がってくる様子を指します。まるで温泉が湧き出ているように見えることから、この名前が付けられました。この湧き突きは、酵母が元気に育っている証拠であり、酒母造りが順調に進んでいることを示す重要な目安となります。他にも、酸味や甘味、香りの変化など、様々な変化が酒母の中で起こります。蔵人は、これらの変化を五感を使って見極め、長年の経験と勘を頼りに、酒母の状態を管理していきます。このように、酒母造りは、繊細な管理と熟練の技術が求められる、お酒造りの要となる工程なのです。酒母造りの出来栄えが、最終的なお酒の味わいを大きく左右すると言っても過言ではありません。それぞれの蔵元が持つ独自の技術と経験が、個性豊かなお酒を生み出しているのです。