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お酒とpH:味わいの科学

お酒の酸っぱさは、そのお酒の持ち味を決める大切な要素の一つです。この酸っぱさは「水素イオン指数」と呼ばれる数値で表され、0から14までの目盛りで示されます。7を中性とし、それより数値が小さいほど酸っぱさが強く、大きいほど反対にアルカリ性が強くなります。お酒は、多くの場合、酸っぱい側に分類され、お店で売られている日本酒では、水素イオン指数は4.2から4.7の範囲にあります。このわずかな数値の差が、お酒の風味に大きな違いを生み出します。酸っぱさは、舌で直接感じるだけでなく、甘さ、苦さ、渋さなど、他の味覚との釣り合いも左右します。例えば、同じ甘さのお酒でも、水素イオン指数が低いと酸っぱさが際立ち、後味の良いさっぱりとした印象を与えます。反対に、水素イオン指数が高いと甘さがより強く感じられ、円やかな味わいになります。また、酸っぱさは、お酒の保存にも深く関わっています。水素イオン指数が低い、つまり酸っぱいお酒は、雑菌の繁殖を抑える力があり、腐敗しにくいため、長期保存に向いています。日本酒の醸造過程では、乳酸菌や酵母など、様々な微生物が働きますが、これらの微生物の活動も、水素イオン指数に影響されます。さらに、酸っぱさは、お酒の色や香りにも関係しています。例えば、赤ワインの鮮やかな赤い色は、ブドウに含まれる色素であるアントシアニンが、酸性条件下で安定しているためです。また、お酒の香りの成分の中には、酸性度によって揮発しやすさが変わるものもあり、水素イオン指数が香りの強弱に影響を与えることもあります。このように、水素イオン指数は単なる数値ではなく、お酒の複雑な味わいを理解する上で、また、お酒の保存や色、香りなどを考える上でも欠かせない大切な目安なのです。