
酒粕の技:粕四段とは?
{酒造りの世界は、古くから伝わる技と新しい工夫が融合した奥深い世界}です。その中で、あまり知られていないものの、独特の風味を持つお酒を生み出す技法の一つに「粕四段」があります。これは、お酒のもととなる醪(もろみ)に、お酒を搾った後に残る酒粕を再び加えるという、一見すると不思議な手法です。今回は、この「粕四段」について、その概要や目的、そして味わいに与える影響について詳しく見ていきましょう。まず「粕四段」とは、醪が四段仕込みの最終段階に差し掛かった時に酒粕を加えることを指します。四段仕込みとは、米、米麹、水を数回に分けて加えていく、日本酒造りで多く用いられる手法です。この四段仕込みの最後の段階で、あえて酒粕を加えることで、醪の中に複雑な成分が溶け出し、独特の風味とコクが生まれるのです。では、なぜこのような手間のかかる工程を行うのでしょうか?その目的は主に二つあります。一つは、酒粕に含まれる酵母や酵素の働きによって、醪の味わいをより深く複雑にすることです。酒粕には、発酵を終えた後も、様々な有用な成分が残っています。これらを醪に戻すことで、新たな香りの成分が生成されたり、味わいに奥行きが出たりする効果が期待できます。もう一つの目的は、酒の濃度と味わいを調整することです。酒粕を加える量を調整することで、最終的に出来上がるお酒の濃度や味わいのバランスを細かく調整することが可能になります。「粕四段」によって生まれる味わいは、通常の日本酒とは一線を画す独特のものです。酒粕由来の複雑な香りや濃厚なコク、そしてまろやかな舌触りが特徴で、一度味わうと忘れられない印象を与えます。ただし、酒粕の種類や加える量、そしてその後の発酵管理によって、出来上がるお酒の味わいは大きく変化します。そのため、蔵人たちは長年の経験と勘を頼りに、最適な方法を探求しています。このように「粕四段」は、伝統的な技と蔵人の繊細な技術が融合した、まさに職人技が生み出す奥深い手法と言えるでしょう。