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推測統計学入門:全体像を掴む

推測統計学とは、全体を調べることなく、一部のデータから全体の性質を推測する統計学の一分野です。まるで、広大な湖の魚の数を数えるような、現実的には全てを把握することが難しい場面で力を発揮します。例えば、湖の魚を全て捕まえて数えるのは、多大な時間と労力を要します。推測統計学を用いれば、そのような莫大な手間をかけずに、おおよその魚の数を推定することができます。具体的には、まず一部の魚を捕獲し、それらに印をつけて湖に戻します。十分な時間が経ち、印のついた魚が他の魚と十分に混ざり合った後、再び魚を捕獲します。この時、捕獲した魚の中に、印のついた魚がどれだけの割合で含まれているかを調べます。最初の捕獲で印をつけた魚の数が既知であれば、この割合から湖全体の魚の数を推定することができるのです。このように、一部の標本から全体の特徴を推測する手法は、時間や費用を節約できるだけでなく、全体を調査することが不可能な場合にも非常に役立ちます。例えば、工場で生産される全ての製品を検査することは現実的ではありません。そこで、一部の製品を抜き出して検査し、その結果から全体の製品の品質を推測します。また、新製品に対する消費者の反応を調査する場合にも、全ての消費者にアンケートを実施するのではなく、一部の消費者にアンケートを実施し、その結果から全体の消費者の反応を推測します。推測統計学は、製品の品質管理や市場調査、選挙の出口調査など、様々な分野で活用されています。選挙速報で、開票率がわずか数パーセントの時点で「当選確実」と報道されるのも、推測統計学に基づいた予測です。限られた情報から全体像を描き出す推測統計学は、現代社会においてデータに基づいた意思決定をする上で欠かせない手法と言えるでしょう。