
お酒の原料:知られざる胚乳の世界
お酒を造る上で、お米の良し悪しは出来上がるお酒の味に大きく関わってきます。お米の中心には白い胚乳と呼ばれる部分があり、ここがお酒造りで大切な役割を担っています。この胚乳は、お米の栄養を蓄える貯蔵庫のようなもので、お酒の風味や香りのもととなる成分がたくさん含まれています。この胚乳についてよく知ることが、お酒の深い味わいを理解する上で欠かせません。実は、この胚乳は一種類ではなく、さらに細かい構造に分かれています。中心から外側に向かって、心白、外硬質部、糊粉層の三層構造になっています。一番中心にある心白は、デンプンがぎっしりと詰まっており、純粋なデンプンから成る部分です。心白が大きく発達したお米ほど、雑味のないすっきりとしたお酒に仕上がります。心白の外側を覆っているのが外硬質部です。心白に比べてデンプンが小さく、タンパク質や脂質なども含まれています。外硬質部は、お酒にコクや深みを与える役割を果たします。そして、一番外側にあるのが糊粉層です。糊粉層は、胚乳の中でも特にタンパク質やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれている部分です。お酒に独特の風味や香りを与えるだけでなく、発酵を促す酵母の栄養源としても重要な役割を担っています。このように、それぞれの層が持つ性質が複雑に絡み合い、お酒の味わいを作り出しているのです。お米の種類によって、これらの層の厚さや割合は異なってきます。お酒造りに適したお米は、心白が大きく、外硬質部と糊粉層が薄いのが特徴です。例えば、「山田錦」のように心白が大きく発達したお米は、吟醸香と呼ばれる華やかな香りを生み出し、高級酒の原料として重宝されています。このように、お米の性質を理解することで、お酒の味わいの違いもより深く楽しむことができるでしょう。