製麴

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日本酒

麹蓋:高級酒の秘密兵器

日本酒造りには、目に見えない小さな生き物の働きが欠かせません。その小さな生き物、麹菌を米に繁殖させる工程を製麹と言いますが、この製麹で重要な役割を担うのが麹蓋です。麹蓋は、杉で作られた浅い箱状の道具です。蒸した米に麹菌を振りかけ、麹蓋に薄く広げていきます。この時、蒸し米をただ盛るだけではなく、職人は麹の状態を見極めながら、厚さや広げ方を調整します。麹蓋は単なる容器ではなく、麹菌の生育を左右する重要な道具なのです。麹菌が元気に育つには、温度と空気、そして水分が大切です。麹蓋は杉で作られているため、適度な通気性と保温性を持ち合わせています。これにより、麹蓋の中の蒸し米全体に空気が行き渡り、麹菌はむらなく呼吸することができます。また、杉の持つ吸湿性は、蒸し米の水分を適切に保つ効果もあります。さらに、麹蓋の浅い形状も重要な意味を持ちます。浅いからこそ、蒸し米全体を均一な環境に保ちやすく、麹菌が隅々までしっかりと繁殖できるのです。そして、蓋を開閉することで、温度や湿度の微調整も行います。麹蓋を扱う職人は、長年の経験と勘を頼りに、蓋の開け閉めのタイミングや時間を見極め、麹の生育を促します。まさに、職人の技と経験が活かされる工程と言えるでしょう。こうして、麹蓋の中でじっくりと育てられた麹は、日本酒の味わいの根幹を成す、奥深く豊かな風味を生み出します。麹蓋は、まさに日本酒造りの要と言えるでしょう。
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伝統の技、箱麹法:高級酒へのこだわり

日本酒造りにおいて、麹は酒の味を決める重要な役割を担っています。その麹を作る工程である製麹には、様々な方法がありますが、中でも伝統的な技法として知られているのが「箱麹法」です。これは、木でできた麹箱を用いて麹菌を育てる製法で、手間暇を惜しまず、じっくりと麹を育てていくことで、奥深く豊かな味わいの酒を生み出すことができます。まず、蒸した米を麹箱に薄く、均一に広げます。この時、米の厚みが均一でないと、麹菌の生育にムラが出てしまうため、細心の注意が必要です。次に、種麹と呼ばれる麹菌を、蒸米全体に満遍なく丁寧に撒いていきます。麹菌が蒸米によく馴染むよう、優しく丁寧に混ぜ合わせていくことが大切です。種麹を撒いた後は、麹蓋と呼ばれる蓋をして、麹を育てていきます。麹菌が活発に活動するためには、温度と湿度を適切に管理することが不可欠です。麹箱は保温性が高いため、麹菌の生育に適した温度を保ちやすいという利点があります。ただし、温度が高すぎると麹菌が死滅してしまうため、麹職人は経験と勘を頼りに、こまめに温度と湿度をチェックし、調整を行います。麹蓋の開閉や、藁を巻いたりするなどして、麹の温度を調整していきます。こうして、数日間かけてじっくりと麹を育てていくことで、蒸米全体に麹菌が繁殖し、甘く芳醇な香りが漂う、質の高い麹が出来上がります。この伝統的な箱麹法で造られた麹は、日本酒に独特の風味と深みを与え、まさに酒の命と言えるでしょう。手間暇を惜しまず、一つ一つの工程に心を込めて麹を育てる、職人の技と情熱が、最高の酒を生み出す源となっているのです。