諸白

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日本酒

片白仕込み:日本酒の伝統を探る

お酒造りの最初の大切な仕事、精米についてお話しましょう。お酒造りに使うお米は、私たちが普段食べているお米とは少し違います。お酒造りでは、お米を丁寧に磨き、中心部分にある純粋なデンプンだけを使うのです。お米の外側には、たんぱく質や脂質など、お酒にとって邪魔になる成分が含まれています。これらは、お酒に雑味やいやな香りをもたらす原因となるため、精米という工程で取り除く必要があるのです。お米を磨くことで、雑味のないすっきりとした味わいのお酒に仕上がります。精米の程度は「精米歩合」という数字で表されます。精米歩合とは、玄米の重さを100%とした時に、精米後の白米の重さが何%になるかを示す数字です。例えば、精米歩合70%のお酒は、玄米を30%削って造られたお酒です。精米歩合60%のお酒なら、玄米を40%削っています。精米歩合が小さいほど、お米は深く磨かれ、雑味が少なくなり、より洗練された味わいのお酒となります。しかし、深く磨けば磨くほど、お米の量は減ってしまいます。そのため、精米歩合の低いお酒は、手間と材料がかかる分、値段が高くなる傾向があります。精米歩合は、お酒の風味や香りに大きく影響します。精米歩合が高いお酒は、米本来の豊かな風味と力強い味わいが特徴です。一方、精米歩合が低いお酒は、繊細な香りとなめらかな口当たりが楽しめます。このように、精米は日本酒造りの最初の、そして最も重要な工程の一つです。精米の程度によってお酒の味わいが大きく変わることを知っておくと、お酒選びがもっと楽しくなるでしょう。
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日本酒の歴史を彩る諸白

お酒作り、中でも日本酒作りには欠かせないお米。そのお米の種類や使い方によって、お酒の味わいは大きく変わります。中でも「諸白」という製法は、現代の日本酒を語る上で欠かせない重要な要素です。諸白とは、お酒のもととなる麹を作るための麹米と、発酵を進めるために加える掛米の両方に、白米を使う製法、そしてその製法で造られたお酒のことです。昔はお米をそのまま、あるいは少しだけ精米したものを麹米や掛米に使っていました。しかし、諸白のように両方に白米を使うことで、雑味が少なくなり、よりすっきりとした上品な味わいの日本酒が生まれるようになりました。現在私たちが口にする日本酒の多くは、この諸白の製法を受け継いでいます。諸白という名前が初めて文献に登場したのは、室町時代。1576年の僧侶の日記『多聞院日記』に「もろはく」という言葉が記されており、これが現在確認できる最も古い記録です。このことから、室町時代にはすでに諸白の製法が確立されていたと考えられています。当時の日本酒作りはまだ発展途上で、様々な方法が試されていました。そんな中で諸白という製法が登場したことは、日本酒の質を高める上で大きな進歩でした。香り高く、洗練された味わいの日本酒は、人々を魅了し、諸白は瞬く間に広まっていきました。諸白の登場は、日本酒の歴史における大きな転換点となり、現代に繋がる日本酒の礎を築いたと言えるでしょう。現在も様々な種類の日本酒が楽しまれていますが、その背景には、先人たちのたゆまぬ努力と、諸白のような革新的な製法があったことを忘れてはなりません。