追水

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日本酒

追水:日本酒造りの秘訣

お酒造りは、繊細な技と深い知識が求められる、まさに芸術と呼ぶにふさわしいものです。その中でも日本酒造りは、特に複雑な工程を経て、独特の風味と香りが生まれます。数ある工程の中でも、醪(もろみ)の管理は日本酒の品質を左右する非常に重要な工程です。醪とは、蒸した米、米麹、そして水を混ぜ合わせたもので、いわば日本酒の素となるものです。この醪の中で、酵母が糖を分解し、アルコールと二酸化炭素を生み出す発酵という工程を経て、日本酒へと変化していきます。醪の中では、目に見えない小さな酵母たちが活発に活動しています。酵母は糖を栄養源として、アルコールと二酸化炭素を生み出すことで、醪を日本酒へと変化させていきます。この酵母の働きこそが、日本酒造りの心臓部と言えるでしょう。しかし、この発酵は、周りの温度や醪の成分、酵母の元気さなど、様々な要因に影響を受けます。そのため、常に醪の状態を見守り、適切な管理を行う必要があります。醪の糖度が高すぎると、酵母の活動が抑制され、発酵が滞ってしまうことがあります。まるで、糖度が高すぎる蜜の中に酵母が閉じ込められて、身動きが取れなくなってしまうかのようです。また、糖度が低すぎると、酵母の活動が活発になりすぎて、風味が薄く、すっきりしすぎたお酒になってしまうこともあります。このような状況を避けるために、蔵人たちは長年の経験と勘、そして最新の技術を駆使して、醪の状態を細かく調整します。その調整方法の一つに「追水」という技術があります。追水とは、発酵中の醪に水を追加することで、糖度を調整する技術です。まるで、料理人が味を見ながら、少しずつ調味料を加えていくように、蔵人たちは醪の状態を見ながら、慎重に水を追加していきます。追水を行うことで、酵母の活動を最適な状態に保ち、理想的な発酵を実現することができます。このように、日本酒造りは、醪の管理一つとっても、繊細な技術と深い知識が求められる、まさに匠の技と言えるでしょう。