酛分け

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日本酒

もと分けと丸冷まし:酒造りの温度管理

お酒造りにおいて、お酒のもととなる酵母を育てる工程は、酒母造りと呼ばれ、大変重要な意味を持ちます。この酒母造りは、例えるなら植物の苗を育てるようなもので、最終的なお酒の出来栄えに大きく影響します。酒母は、お酒の原料である醪(もろみ)の中で働く酵母のいわばスターターのような役割を果たし、質の良い酒母は、香り高く味わい深いお酒を生み出します。酒母造りで最も大切なのは、酵母にとって最適な環境を維持することです。酵母は生き物ですから、その生育には温度管理が欠かせません。温度が高すぎると酵母は弱ってしまい、反対に温度が低すぎると活動が鈍くなり、うまく増殖できません。ちょうど良い温度を保つことで、酵母は元気に増殖し、良質な酒母となります。この酵母の増殖と温度管理に大きく関わるのが、「もと分け」と「丸冷まし」と呼ばれる二つの工程です。「もと分け」とは、増えすぎた酵母を適切な量に調整し、新たな環境でさらに増殖を促す作業です。この作業により、酵母の活力を維持し、安定した発酵を促します。そして、「丸冷まし」とは、タンク全体を冷却することで、酵母の増殖速度を調整する作業です。急激な温度変化は酵母に悪影響を与えるため、ゆっくりと時間をかけて冷却することで、酵母の活力を損なうことなく、最適な状態に保ちます。このように、「もと分け」と「丸冷まし」は、酵母の増殖を制御し、質の良い酒母を育てるための重要な工程です。これらの工程を丁寧に行うことで、最終的に出来上がるお酒の味わいや香りが格段に向上します。まさに、酒造りの職人技が光る工程と言えるでしょう。