その他 お酒と酵素の深い関係
お酒造りは、古来より受け継がれてきた技術と、微生物の働きによって成り立っています。その微生物の働きを支えているのが、酵素と呼ばれるものです。酵素は、生き物の体内で作られる特別なたんぱく質で、様々な化学反応を手助けする役割を担っています。お酒造りにおいても、酵素はなくてはならない存在です。お酒の原料となる穀物には、でんぷんが多く含まれています。このでんぷんは、そのままではお酒の原料となる糖にはなりません。そこで、酵素の力が必要となります。麹菌が生み出す酵素であるアミラーゼは、でんぷんを糖へと分解する働きがあります。まず、でんぷんはアミラーゼによって、より小さな糖であるデキストリンに分解され、さらにデキストリンはグルコアミラーゼによって、ブドウ糖に分解されます。こうして、お酒造りに必要な糖が作られるのです。糖からお酒へと変わる過程でも、酵素は重要な役割を果たします。酵母は、糖を分解してアルコールと炭酸ガスを作り出す微生物です。この糖の分解も、酵母が持つ酵素によって行われています。酵母は、糖をピルビン酸と呼ばれる物質に分解し、さらにピルビン酸をアセトアルデヒド、そして最終的にアルコールへと変化させます。この一連の反応は、様々な酵素がそれぞれの段階で働くことで実現しています。酵素の種類や働きは、お酒の種類によって異なり、それぞれの工程で働く酵素の種類や働きを理解することは、お酒の奥深さを知る上で非常に重要です。例えば、日本酒造りでは、麹菌や酵母が様々な酵素を作り出し、でんぷんの糖化やアルコール発酵を進めます。ビール造りでは、麦芽に含まれる酵素がでんぷんを糖に変え、その後、酵母が糖をアルコールに変えます。ワイン造りでは、ブドウに元々含まれている糖を酵母がアルコールに変えます。このように、お酒の種類によって働く酵素も異なるため、それぞれのお酒の個性が生まれるのです。酵素の働きを知ることで、お酒造りの複雑さや奥深さをより理解し、お酒をより一層楽しむことができるでしょう。
