
お酒の製造におけるアルコール添加
お酒造りにおいて「アルコール添加」とは、発酵途中の液体にもろみと呼ばれる段階で、醸造アルコールなどを加える作業のことを指します。これは、出来上がるお酒の風味や特徴を調整するために行われます。お酒の種類によって、この作業を行う目的や時期は異なります。例えば日本酒造りを例に見てみましょう。日本酒では「上槽」と呼ばれる工程の前にアルコール添加が行われます。上槽とは、もろみからお酒を搾り取る作業のことです。この上槽前にアルコールを加えることで、出来上がるお酒の味わい、香り、そして後味にまで影響を与えることができます。では、なぜこのような作業を行うのでしょうか。アルコール添加の歴史を紐解くと、第二次世界大戦後の食糧難の時代まで遡ります。当時の日本では米が不足しており、お酒造りに必要な原料が十分に確保できませんでした。そこで、限られた米からより多くのお酒を造るためにアルコール添加という方法が採用されるようになったのです。現在では米不足は解消されていますが、アルコール添加はお酒のコストを抑えたり、安定した品質のお酒を造ったり、また独特の風味を表現するためなど、様々な理由で行われています。特に、大量生産されるお酒においては、コスト管理の面で重要な役割を担っていると言えるでしょう。しかし一方で、原料本来の風味を活かしたお酒造りを重視する動きも高まっており、アルコールを添加しないお酒も数多く生産されています。消費者はそれぞれの製法の違いを理解した上で、自分の好みに合ったお酒を選ぶことが大切です。