風物詩

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日本酒

杉玉:新酒の知らせ

酒屋の軒先に緑の球体が吊るされているのを見かけたことはありませんか?それは「酒林」、別名「杉玉」と呼ばれ、新しいお酒が出来上がったことを知らせる印です。その歴史は古く、江戸時代の中頃まで遡ります。その頃には、杉の葉を束ねて吊るすことで、新しいお酒の完成を人々に伝えていました。青々とした杉玉は、まさに新しいお酒の新鮮さを表しています。その爽やかな木の香りは、酒屋の周囲に漂い、人々は新しいお酒の出来栄えを想像しながら、自然と酒屋へと誘われたことでしょう。お酒の種類や味わいを知らせる看板のような役割も担っていたのかもしれません。酒林は、時間の経過と共にその色を変えていきます。はじめは鮮やかな緑色ですが、徐々に茶色へと変化していきます。この色の変化は、お酒の熟成を表しています。緑色は新しいお酒、茶色は熟成したお酒という具合に、酒林の色を見るだけで、その酒屋でどんなお酒が楽しめるのかが分かるのです。現代では、多くの酒屋でこの伝統的な風習が受け継がれています。酒林は、日本の酒文化を象徴する存在として、私たちに季節の移ろいと共に楽しめるお酒の魅力を教えてくれます。街中で酒林を見かけたら、その緑から茶色への変化に注目してみてください。そこには、日本の伝統的なお酒造りの歴史と、お酒の熟成という奥深い世界が隠されているのです。まるで生きているかのように変化する酒林は、私たちに季節の巡りと共に、お酒の楽しみ方も教えてくれる、そんな存在と言えるでしょう。